そこは自分で

「最近、中野ブロードウェイに行った?」
「いや、ぜんぜん」
「凄いことになってるよ」
 と、まんだらけ好きの息子がいう。
「あそこは昔から凄いだろ」
「いやオタ方面じゃなくて、ダイソーがどんどん侵略してきてさ」
「まじで?」
「いまビルの半分くらいダイソー」
「百均だろ? そんなに店広げて、何を置くっていうんだよ」
「なんでもあるよ」
「じゃあ、百円やるからなんか変なもん買ってこいよ。これ、絶対百円で無理だってやつ」
「いいよ」
 息子は軽く引き受けて、自転車に乗っていった。
「ただいまー」
「早くないか。ほんとに行ったのか?」
「行った」
「で、なに買った?」
「あれ」
 息子は上を指さした。
 空中に宇宙船が浮かんでいた。
「おれ、自転車とってくるから、はい、これ」
 とリモコンを渡された。
 ボタンを押すと、操縦席にいた。
「なんでこれが百円なんだよ」
 ぼやきつつ操縦桿を引くと、宇宙船は宙に舞い上がり、あっという間に中野に着いた。
 着いたのはいいが、無茶苦茶腹が減った。
 息子が地上から叫んだ。
「とーちゃん、動力は自分の体力だから、あんまり乗ってると倒れるよー」
「はやく言えー」
 
(了)

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