鉛筆

 かりかりかりかり、と音がする。
 原因はわかっている。
 机の隅で一心不乱に鉛筆を囓っている電子ネズミだ。
「なにかあったのか」
「かりかりかり」
 ネズミ社会にもいろいろあるのかもしれない。
 干されているのか区役所にも行かず、朝から鉛筆をかりかりかかり。
 机の上には、きれいに削られた2B鉛筆がずらり。
「はやく書くでチュー」
「うーん。なに書こうかなあ」
「手紙を書くでチュー」
「誰に?」
「誰でもいいでチュー」
「よくないだろ。そこが肝心なんだから」
「山田区長」
「え」
「区長に、ブラックビスよりよろしくって書くでチュー」
「なんかパクッてないか」
「ぷしゅー」
 よくみると、びすの目が据わっている。
 あ。
 ひょっとして、黒鉛にラリっているだけ?
「うぃ〜」
 鉛筆癖の悪い電子ネズミは大の字にひっくり返って寝てしまった。

(了)

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