見出し画像

紙ヒコーキ

 朝起きて、昼仕事して、夜寝てという規則正しい生活ができない。
 昼間に起きてぼーっとしているのが日常である。
 ビールを飲んで目が覚めると、新聞を取りに行く。
 パラパラとめくってみるが、とくに目新しいこともないので退屈し、広告チラシを取り出す。
 チラシもつまらん。
 無意識のうちに紙ヒコーキを折り始めていた。
 すると、いつの間にか、体長2センチほどのミニチュア人間がテーブルの縁にずらっと並んで、私の手先を注目していたのである。
「おい、おまえ」
「もっとマジメに折れ」
「おれたちはそれに乗るんだからな」
「どこの空港に着陸させる気だよ」
「まさか行ってこいじゃないだろうな」
「テロだテロ」
「この殺人者め」
 ヒマつぶしでなんでここまで言われなきゃいかんのだ。腹が立ち、アースジェットを吹きかけてやった。
「あ、なにをしやがる」
「毒ガスだ毒ガスだ」
「やっぱりテロだ」
「うわあ。苦しい苦しい」
 やつらがバタバタしているうちに、手早く紙飛行機を完成させ、中に放り込むと、窓から外に放り投げてやった。
 まったく油断も隙もない。
 仕事部屋に戻ると、椅子の上で寝ていたピンクの象がよっこいしょと重い腰を上げて、どこかへ消えた。

(了)

目次

ここから先は

0字
このマガジンに含まれているショートショートは無料で読めます。

朗読用ショートショート

¥500 / 月 初月無料

平日にショートショートを1編ずつ追加していきます。無料です。ご支援いただける場合はご購読いただけると励みになります。 朗読会や音声配信サー…

新作旧作まとめて、毎日1編ずつ「朗読用ショートショート」マガジンに追加しています。朗読に使いたい方、どうぞよろしくお願いします。