料理本
読む本は自分なりに選んでいるつもりなのだが、しばしば地雷本に当たる。面白くもなんともない、というよりむしろ、ページをめくればめくるほど腹が立ってくるような本。
読まなきゃいいのだが、もうすこしで面白くなるのではと期待しては最後まで裏切られ続け、壁に叩きつける。
そのたびに妻に、
「壁紙が傷がつく!」
と怒られるのであった。
ぷるぷるぷる。
また地雷本を踏んだ私は、壁に叩きつけるのをこらえ、洗濯乾燥機にたたき込んでやった。ざまあみろ。溶けてしまえってえんだ。
乾燥してえらいことになってしまった。修理代三万円は、当然、小遣いから引かれた。
やめればいいのに、それでもアマゾンに注文してしまう私。
一冊、二冊は快調に読み進んだが、三冊目で暗雲が垂れ込める。
投げても怒られる。
乾燥しても怒られる。
どうしてやろうか、と、あたりを見回して、鍋が目についた。
水を注ぐ?
醤油を入れる?
和だしと砂糖を少々。
ぐらぐら煮立てて腹立ち本をぶち込み、弱火でねちねち煮てやった。
ざまあみろ。
気が済んだので火を止めてさあ寝ようとしたところへ、妻と息子が起きてきた。
「わあ、いい匂い」
「どうしたの、料理なんかしちゃって」
「食べよう食べよう」
「お、おれ、もう眠いから」
私はあわてて寝室に駆け込んだ。
「うまいなあ、これ」
「とろとろやん」
という小さな声が聞こえてくる。
あいつら、なに食ってんねん?
(了)
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