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【SS】小野君

 家の近くに大きな公園がある。中央には人工池があった。人工といえども、亀もいるし、鯉もいる。
 酔っぱらいが鯉を料理して食ってしまったり、小学生が亀を盗んだりと、いろいろな事件が起きる。
 亀を盗んだのは誰あろう、うちの息子だ。
 学校は休んでも公園通いは休まない。ある日、息子と友だちの小野君は、人工池にオタマジャクシを発見し、大興奮した。なんとかすくいとろうとしているうちに、小野君がぼちゃっと池に落ちた。
「あっ」
 息子は青ざめた。
「小野くーん小野くーん」
 叫びまくっていると、白いドレスを身にまとい、頭に飾り物をつけた女の人が水中からふわーっと出てきた。
「おまえが落としたのはこの金の斧か」
 ぶんぶんと息子は首を振った。
「では、この銀の斧か」
「人間の小野君でーす」
「ちぇっ」
 女神様は舌打ちすると、水の中に潜り、小野君の首ねっこを持ってあらわれた。
「では、このアホか」
「このアホです」
「つまんねー」
 女神様は小野君を陸に放って、池の中に帰ってしまいましたとさ。
「このアホはないよなー」
 と小野君はあとあとまで女神様を恨んでいた。

(了)

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