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ロックマンシリーズの復刊 ファンの“夢”を、本に乗せて

人気アクションゲーム、ロックマンシリーズの第1作がゲームソフト会社CAPCOMから発売されたのは1987年のことでした。当時、ファミコン向けのソフトとして登場した同シリーズは、現在まで種々の派生作品を生みながら、幅広い世代で今も新しいファンを獲得しています。

復刊ドットコムでは、このロックマンシリーズをコミカライズした作品の復刊を中心に、これまで数多くの書籍を出版してきました。復刊で繋がった縁から新作も手がけており、コミックシリーズ各巻、設定資料集、トレジャーBOXなど、その数は30冊以上に上ります。

中でも、作者それぞれの個性が光るコミックシリーズには熱心なファンが多く、子ども時代に夢中になって読んだというファンからは、熱意あるコメントとともに多くの復刊リクエストが寄せられました。

ロックマンに関連する書籍の出版は、復刊ドットコムの中でも、特に長い年月をかけて取り組んできたものの一つです。本記事では、復刊ドットコムでの同シリーズの出版を振り返りながら、その魅力をあらためて探ります。


熱烈ファンに捧ぐ ロックマン作品の復刊

復刊ドットコムで初めて復刊したロックマン作品は、岩本佳浩先生の『ロックマンX』シリーズでした。その後、ありがひとし先生の『ロックマンメガミックス』、『ロックマンギガミックス』、『ロックマンマニアックス』、出月こーじ先生の『ロックマン8』シリーズ、『ロックマン&フォルテ』、鷹岬諒先生の『ロックマンエグゼ』シリーズ、あさだみほ先生の『バトルストーリーロックマンエグゼ』シリーズ、おぎのしん先生の『ロックマン ゼクス』シリーズ、と次々に復刊してきました。

復刊ドットコムから刊行されたロックマン作品の一部

数々のロックマン作品のうち、復刊する作品を絞る上で一つの基準となっていたのは、ゲームとコミックの世界観がよく合い、ファンの人気が高いこと。復刊を担当してきた編集者は、リクエストに添えられたコメントを丁寧に読み、復刊を待ち望むファンの熱意を汲み取ることで、復刊の企画を具体化してきました。

原作のゲームは子供向けのやや単純なストーリーですが、こちらの漫画のほうは描写がリアルでシリアスさが増し、作者オリジナルのキャラクターやストーリーが盛り込まれ、世界観が壮大になっています。キャラクターひとりひとりに深いエピソードが込められていて、読めば読むほど味の出る作品です! 

『ロックマンX』復刊リクエストより引用 k-kunさん(2003/02/20)

有賀先生の描かれるロックマンが一番かっこいい!
ロックだけじゃなく、ボスメンバーも最高です!幼心に惚れた思い出があります。
これはぜひとも復刊していただきたい…あのときの感動をもう一度!!

『ロックマンメガミックス』復刊リクエストより引用 uny@nさん(2008/09/30)

当時連載中の漫画の中で一番のお気に入りでした。
原作の設定をうまい具合に料理し高い画力で描き出される漫画独自の世界観は、ゲームをやっていた身としても納得の満足感を得られるものでした。
以前集めていたものは引っ越しや身辺整理のために泣く泣く処分してしまったのですが、やはり今になっても読み返したいと思ういい漫画だと思います。

『ロックマンエグゼ』復刊リクエストより引用 たきこめこさん(2015/03/17)

ロックマン作品の復刊では、ファンに喜んでもらうための工夫にも一段と力が入っています。

実は、各作品の著者自身も皆さん、筋金入りのロックマンファン。

新しいファンも、旧版を持っているファンも、誰もが楽しめるように……各著者たっての願いが、それぞれの形でファンの元に届けられることになりました。

復刊された作品の中で、旧版と全く同じ仕様のものはありません。カバーイラストの書き下ろしをはじめ、単行本未収録の作品や新作の収録、ポストカードやステッカーの付録など、何らかの形で新たな要素が付け加えられたのです。

思い入れのある作品を手元に置いて楽しみたいという気持ちを誰より理解する著者と、ファンや著者の気持ちを受け止めて復刊企画をまとめ上げる編集者。ロックマン作品の復刊は、ファンによる、ファンのための復刊といっても過言ではありません。

ゲームと共に、ロックマンを盛り上げる

ところで、ロックマンに関連した書籍は数多く存在しますが、ゲームあってこその、本。

作品を完成させる上ではもちろんのこと、読者の元へ届ける上でも、ロックマンの生みの親であり権利者であるCAPCOMとの協力関係が欠かせません。

まず、作品の制作面では、版権担当者をはじめ、ゲーム開発の担当者が、主にキャラクター造形や色について細かなチェックを行います。

編集者によれば、女性キャラクターのフォルムについて、少し胸が強調されすぎているとの指摘が入ったこともあったのだとか。ファンのためにも、世界観やキャラクターの統一性を損なうことがないよう、ロックマンという作品が大切に守られているのですね。

そして、販促面では、より多くのファンのもとへ作品を届けるために、ロックマンシリーズの周年記念や新作ゲームの発売などに合わせて書籍を刊行することもあります。

たとえば2016年にはロックマンエグゼ生誕15周年、2017年にはロックマン生誕30周年を記念して、各オフィシャル設定資料集を復刊しました。

2021年のロックマンエグゼ生誕20周年には、『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』を企画し、新刊として発売。設定資料集や複製原画、ポストカードなど、ファンにはたまらないアイテムを詰め合わせたトレジャーBOXは、CAPCOMの全面協力により実現したものです。

『ロックマンエグゼ トレジャーBOX -祝! 20周年の玉手箱-』

さらに、2023年には、ゲーム『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』の発売に合わせて、新刊『ロックマンエグゼ NEW STORIES 2023』を出版しました。

ロックマン作品の復刊を手がけるようになって以来、少しずつ温めてきた関係性は、過去の作品の復刊にとどまることなく、新たな企画を生みながら、ロックマンシリーズの盛り上がりを一出版社として支えることにつながっています。

ロックマンシリーズ 本の魅力

復刊されたロックマン作品のそれぞれの魅力をいい尽くすには紙幅が足りず、往年のファンの知識と熱量には到底及びません。それでもあえてその魅力を語るとすれば、それは、ロックマンという作品世界の解釈を広げ、補完し、ファンの“夢”を叶えてくれるということです。

たとえば、ロックマンシリーズのコミックにはそれぞれ原作となるゲームがありますが、どれもゲームの物語を単になぞっているだけではありません。バトルを中心として展開するゲームでは表現しきれなかった要素――登場キャラクターの個性や関係性、物語などが丁寧に描かれることで、作品世界の奥行きを深く感じることができ、あらためてゲームをプレイするときには、その世界観をより楽しめるようになるのです。

ロックマンに限らず、作中の場面の合間や、空白の時間を想像し、その作品のキャラクターが生き、暮らす世界を自らの想像力で広げて楽しむという経験をしたことがある人も多いはず。ですが、多くの場合で、そうした楽しみ方は個人に委ねられるものです。

しかし、ロックマンシリーズは幸いなことに、原作のお墨付きを得て、作品の世界をより鮮やかに、立体的にする本の数々が生まれ続けています。

大好きな作品のキャラクターが生き生きと動き出し、その世界が広がる喜びは、ファンにとって日々の生活の活力にさえなるもの。ロックマン作品の出版は、 ファンの“夢”を本に乗せて、ファンのもとへ届けることなのです。


■取材・文
Akari Miyama
元復刊ドットコム社員で、現在はフリーランスとして、社会の〈奥行き〉を〈奥ゆかしく〉伝えることをミッションとし、執筆・企画の両面から活動しています。いつか自分の言葉を本に乗せ、誰かの一生に寄り添う本を次の世代に送り出すことが夢。
https://okuyuki.info/

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