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くよくよした日は成瀬に行こう~第49回Book Fair読書会~

2月のBook Fair読書会は、JR成瀬駅前にあるコワーキングスペース&カフェ、「TENT成瀬」をお借りして開催しました!

お店にはシェアキッチンや、”ひと棚店主”になれるポップアップボックス、そして「きんじょの本棚」もあります!!
数量限定の週替わりランチもオススメです🍔

そんな「地域の人々をつなぐ」場所での読書会…どんな本と帯が紹介されたのでしょうか。
さっそく見ていきましょう!!
(名前横の数字は、参加してくださった回数)

黒さん(初):伊藤亜紗『手の倫理』講談社選書メチエ

内容と実体験がリンクした帯!

「私は4ヵ月前に出会った知り合いと、1週間前に日比谷駅・17時で待ち合わせをしました。しかし、当日のお昼にLINEをしたら、なかなか既読にならない。ちなみに集合場所までは電車で1時間かかります。こんな時、みなさんはどうしますか?」

「この話は〈安心〉と〈信頼〉の違いに関わってきます。どう違うのか知りたい人は、この本を読めばわかります」

「〈安心〉は、100%裏切らないと思える。でも〈信頼〉は、裏切られるかもしれないけど、信じてみようと”賭け”をする。それを繰り返すうちに、信頼がだんだん積み重なって、安心に変わっていく」

「例えば、この本では視覚障害のある女性が出てきます。この方は外を歩く時、親切に助けてくれる他人に対し、リスクを負って〈信頼〉しています。一方、旦那さんには〈安心〉して全てを委ねられるまでに時間がかかり、結婚してから3年くらい要したといいます」

「私は、日比谷の待ち合わせで時間通り移動し、知り合いと会うことができました。既読がついたのは、16時半。でも〈信頼〉して賭けに勝てたので、嬉しかったですね」

ひなさん(2):丸井とまと『さよなら、灰色の世界』スターツ出版文庫

”灰色という個性”について、話が広がりました。

「きれいな表紙を本屋さんで見つけ、題名も素敵で、あらすじも面白そうだなと思いました」

「主人公の楓は、いつも友達に意見を合わせてしまい、自分を見失っていました。そんなある日、世界が灰色に見える「グレーエラー」を発症し、人の個性を表すオーラだけが色付いて見えるようになります」

「みんなそれぞれ個性の色があるのに、楓自身の色は灰色のままでした。そんな楓が、自分の色を取り戻していくお話です」

「元々『リエゾンーこどものこころ診療所ー』という漫画を読み、人の感情について知りたいと思っていました。この本も〈人に合わせてしまう〉ネガティブな感情への興味が、読むきっかけでした」

「読んだ後は〈どう見られるかより、好きな自分でいればいい〉ということがよくわかり、とても感動しました」

かいさん(初):村田沙耶香『生命式』河出書房新社

単行本では、想像をかきたてる装丁が味わえます。

「めっちゃ好きな人かめっちゃ嫌いな人かに分かれる、尖ったテーマの短編集です」

「表題作(の舞台)は、今から30年後。亡くなった人は、土葬や火葬ではなく”美味しく食べてあげる”ことが当たり前になった世の中のお話です」

「カニバリズム的(な設定)なので、グロい?と思うかもしれません。でも読めば読むほど、それが〈当たり前〉に描かれていて、グロさは重視されていないと分かります」

「主人公は、30年後の常識にまだ拒否感を抱いている女性。〈自分が小さい頃って、こんな世の中だったっけ?〉という感覚が残っています。
ただ、お葬式の誘いを断ろうにも〈ちょっと私、苦手なんですよね〉とは言えず、周りに配慮せざるを得ません」

「村田さんは〈常識とされていることは、本当に常識?〉という問いかけを、刺激的に描くのが上手。
〈正常は、唯一許される発狂〉という名言も出てきますが、みんなおかしいよね、その中で一応、許容されているのが”正常”だよね、という価値観を、どの作品からも感じます」

今の非常識も、30年後はわからないぞ、と思わされる。面白い読書体験でした」

あっこさん(初):万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』角川文庫

あっこさんの描いた玄三郎が大人気!

「しばらく本を読んでいなかったけれど、再読したくなった本です。万城目さんの作品は、不思議な世界で頭がぐるぐるするけれど、温かい気持ちになれて、いつもどこかで泣いてしまいます

「かのこちゃんは好奇心旺盛、元気で明るい小学1年生。玄三郎は、彼女の家にいる老犬。そしてあるゲリラ豪雨の日、犬小屋に猫のマドレーヌ夫人(”夫人”とは、玄三郎の夫人という意味!)が逃げてきます」

「人間と猫と犬、なぜかコミュニケーションが取れてしまう…。でも、ただファンタジーなだけでなく、自分が小学1年生の頃を思い出し、懐かしくなるような表現がいっぱいです」

「小説にも出てきますが、乳歯が生え変わる頃の、いつも新発見がある日々の感覚を思い出しました」

「それぞれの日常も、種を越えた交流も、全てが愛おしくなるお話です」

せーやさん(6):pha『ニートの歩き方 お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法』技術評論社

裏表紙の〈ニートチェックシート〉で適性診断も。

「ニート界でも有名な京大卒の著者が、ニートはどうやって時間をつぶすのか、そしてどうやってお金を稼ぐのかについて書いた本です。仕事で疲れた時などに読むと、すごく肩の力が抜けてきます

◆本書で紹介されている筆者の生活
・図書館かシェアハウスで読書
・アフィリエイト、せどり(or短期バイト)でお金を稼ぐ
・気ままに暮らす者同士、猫との親和性が高い

「人間はもっと”だるい”という感情を優先して生きてもいいんじゃないか、という一文も、印象に残りました」

「ニートと聞くとネガティブな印象を持つかもしれませんが、”ゆるい人生の歩み方”と考えることもできます。そういう生き方もありなんだ!と思うと、心にしみてきました。全然頭を使わずに楽しめる本なので、ぜひ読んでみてください」

たろうさん(3):津村記久子『くよくよマネジメント』清流出版

スワヒリ語、吹き矢、カポエイラ…多趣味な津村さん!

「大好きな芥川賞作家・津村記久子さんのエッセイです。劇的じゃない淡々とした日常を描くという意味で、私は”日常系芥川賞作家”と呼んでいます」

「この本では、ご自身もくよくよしがちだという津村さんの視点で、心配事との付き合い方や、くよくよの先にある大事なものだとか、色々なテーマに
ついて書かれています」

「中でも〈明日の自分を接待する〉という項目があります。例えば(家の)流しに洗い物を溜めたまま寝てしまったら、翌朝起きた時、うわっ、てなるじゃないですか」

「もし〈明日の自分を接待〉しようと思えば、ちょっと面倒くさくても片付けますよね。その積み重ねが、日常を良くしていく」

「また〈趣味はわたしだけのもの〉〈自分という子供との付き合い方〉という章では、自分の機嫌は自分で取る、地に足がついた生き方をされてるんだなと感じました。
それは小説にも表れていますし、ますます津村さんいいなと思いました」

Takaさん(初):河野裕子・永田和宏『たとへば君 四十年の恋歌』文春文庫

他の参加者さんからは「きっと読みます。でも泣いてしまいそう」との声。

「とても好きな本で、これから色んな読書会で紹介していきたいなと思い、この一冊を選びました」

「ともに歌人の河野裕子さんと、永田和宏さん。夫婦がお互いに向けて詠む歌と、エッセイが織り交ぜられた作品です

「前半は、永田さんが河野さんによく𠮟られているなとか、何気ない日常が描かれていますが、河野さんに乳がんが見つかると、雰囲気が変わっていきます」

「(2010年に、64歳で)河野さんは亡くなるのですが、それまでの二人の悲しみが、歌や文章に表れています」

何といふ顔してわれを見るものか私はここよ吊り橋ぢやない

河野裕子

「ただ短歌がいいだけでなく、感情がめちゃくちゃこもっている。永田さんの構成も素晴らしいです。ぜひ、ストーリー的な部分を感じてほしいと思います」

かえちゃんさん(8):朝井リョウ 円城塔 窪美澄 佐川光晴 中村文則 山崎ナオコーラ『夜ふかしの本棚』中公文庫

肩書きを添えると、より”書店にありそう”感が↑↑

「6人の小説家さんが本について寄せたコメントを、テーマ別にまとめている本です。とても大事なことが書いてあって、折に触れて読み返したくなります」

「元々、小説家さんの”小説以外の言葉”(エッセイ、書評、インタビュー、ラジオなど)が好きなんです。つくった文章じゃない、その人自身から出てくる言葉も読みたいなと思っていて…」

「この本では、朝井リョウさんが『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子さん著)を読んだ時の一文が、本が宝物になる瞬間を感じて、すごく好きです」

読書って、楽しい! 本って、すごい! 高校生だった私は読後、純度一〇〇パーセントでそう思いました。飲み下した文章たちが体中を飛び跳ねまわり、泣いていいのか笑っていいのかわからなくなるほど興奮したのです。幸せでした。これが読書から得る幸福なのかと叫びたくなりました。

『夜ふかしの本棚』P.12

「また〈共感できなくたっていい〉の章では、朝井さんと中村文則さんが
素敵なことを書いていました。本は分からなくても、共感できなくても、自分の想像や視野を広げてくれる」

「これは人間関係にも通じるんじゃないかと。分かる/分からない、価値観が合う/合わないの先で、その人をもっと知りたい気持ちになれるはず。本を読む人は、自然とそれができているなと思います」

ふっかー(49):中島京子『夢見る帝国図書館』文春文庫

「書籍は地味だが役に立つんだ!」重厚な歴史を軽快に描く。

「舞台は、かつて日本初の国立図書館が建てられた東京・上野。〈わたし〉と不思議な年配の女性〈喜和子さん〉が出会う現代パートと、主人公が喜和子さんに頼まれて書いた小説(作中作)パート、二軸が交互に進むお話です」

なんと、作中作の主人公は(明治~昭和の)〈図書館〉。文豪たちの交流を見守ったり、樋口一葉に恋をしたり・・・。もちろん楽しいことばかりではなく、国の政策にたびたび翻弄されもします」

図書館のみならず、本や動物にも台詞・心理描写がある点が魅力。彼らの目には、戦争に突き進む人間たちがどう映ったのか…」

「一方の現代パートでは、喜和子さんの過去を巡り、ミステリー的な展開に。老いや死、差別を意識する場面あり、心温まる大人の恋?もありで、両方読みごたえ抜群です」

参加してくださった皆さん、TENT成瀬さん、本当にありがとうございました!!


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