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【コロンビア大学闘争は反ユダヤ主義ではない】

コロンビア大学のパレスチナ支持学生による抗議デモ占拠に対して、シャフィク学長はニューヨーク市警NYPDにデモ学生たちのキャンパス排除を要請した。警官隊はハミルトンホールなど校舎に突入し、デモ学生たちを排除、逮捕した。

ワシントンのアメリカ連邦議会議事堂での下院公聴会「コロンビア大学の反ユダヤ主義への対応」においてコロンビア大学のネマト・シャフィク学長は、抗議デモ学生たちは「反ユダヤ主義」ではないかと共和党議員らから糾弾され、追い詰められた。
「反ユダヤ主義」のラベリングを恐れて、シャフィク学長は警官隊大規模導入を決断した。シャフィク学長が守ろうとしたのは、コロンビア大学か、自分自身の地位か。

アメリカ社会では「反ユダヤ主義」のラベリングにより排外的右翼、ネオナチの烙印を押されることを強く恐れて、イスラエル政府やイスラエル軍を批判できない風潮が昔からある。その結果、アメリカではパレスチナ支持を訴えることが困難な空気が、政治にも大学にも支配的である。
そのような中で、イスラエル軍はハマスとの戦闘でガザ地区に侵攻し、罪のない数多くのパレスチナ人市民が大量虐殺されている。

アメリカ政府にとってハマスはテロ組織であり、アメリカの反テロリズム運動において敵対勢力でもある。しかしながら、ハマスは過激化した武装勢力であり、決してパレスチナを代表するものではない。当然ハマスとパレスチナはイコールではない。ハマスへの報復攻撃として無実のパレスチナ人市民が虐殺されることは許されない。

その現実に対して、アメリカの大学生たちが、アメリカ政府に対して、大学に対して、イスラエル政府に対して、ノーと言っているのであり、虐殺されているパレスチナ人市民と連帯すると言っているのであり、これは決して「反ユダヤ主義」ではない。

この学生抗議デモには、反米勢力が潜んでいるという陰謀論に近い言説があるが、確かにごく一部には紛れ込んでいるかもしれないが、この抗議デモの原因でもなく全く本質的な問題ではない。
(この言説は中国政府が香港民主化デモを弾圧したとき、イラン政府が民主化デモを弾圧したときに権力により使われたロジックだ。)

この抗議デモ学生たちの中心的存在は、上記のようなパレスチナ人市民と連帯することを求めているものであり、また軍事力による殺戮を批判しているものたちである。また「反ユダヤ主義」という烙印を使って政治や大学を抑圧しようとしている状況にノーと言おうとしているものたちである。そのコア層を中心として、その学生たちにシンパシーを感じたノンポリ学生たち、さらには一部のお祭り騒ぎ好きの若者たちが参加して、さらに拡大しているという構図と考えられる。確かにその中にごく一部の、差別主義者や反米勢力は紛れ込んでいるかもしれないが、それは決して大勢ではない。

「反ユダヤ主義」という烙印を恐れず、学生たちは言葉でメッセージをより多く発信して、自分たちの大義名分や主張を世界にアピールすべきだ。そのためのデモ抗議活動だったであろう。大学もその学生たちとより強く向き合い、議論して解決策を見出すべきだ。
それが、リベラルでダイバーシティを愛するコロンビア大学であるはずだ。
この問題は、アメリカが、世界が抱えている本質的な問題であり、権力による排除だけでは決して解決しない人類共通の重要課題だと考えるべきである。

(※このテキストは朝日新聞デジタルのコメントプラスに投稿したコメントを転載したものです。)

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