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前回のマグネシウムに引き続き今回は『亜鉛』のお話です。

亜鉛不足に関しては、内科の採血などでも検査を行うようになってきていますし、亜鉛に対する考え方や認識は少しずつ変化している印象があります。

特に不定愁訴などがある場合、多くは栄養不足を疑います。
その際に亜鉛などの数値を確認し、治療する場合があります。

あまり聞きなれない方もおられるかもしれませんので、まずは亜鉛にどんな役割があるのかを勉強していきたいと思います。

亜鉛は数百種類にも及ぶ酵素活性の中心です。
酵素とは、食べ物を消化したり、栄養を吸収して、体が使えるように変換したり、体の成長や免疫反応など、体を維持するために常に働いているものです。

これらの酵素が上手に働けるように関与しているのが亜鉛です。

亜鉛の働きで最も重要なものは免疫機能です。
特に感染症などの際に活躍するTリンパ球を増やす効果があり、インフルエンザやコロナウイルス感染の予防にも重要です。

その他にも、骨の形成、インスリンの合成による糖の代謝、筋肉や皮膚の原料であるタンパク質の合成、性ホルモンの分泌など健康を維持する上で欠かすことができない存在です。

視力の低下や認知機能の低下など脳への影響が特に大きく、肝臓や腎臓など代謝が盛んな組織ではその影響を特に受けやすいため注意が必要です。

性ホルモンに関係すると言いましたが、亜鉛の濃度が最も高い臓器が前立腺です。そのため亜鉛摂取を行うことは、前立腺がんの治療、予防にも効果がある可能性があります。


もう一つ亜鉛が重要な理由として有害重金属の排泄効果があります。

有害物質を排出してくれる『メタロチオネイン』というタンパク質があります。
このタンパク質は普段は亜鉛と結合して体内に存在しています。

その状態で体内にカドミウムや水銀などが入ってくると、亜鉛から離れて、それらの有害金属とくっつき体外へ排出してくれます。

亜鉛が少ないとこのメタロチオネインも少なくなってしまうため、有害金属が体内に溜まりやすくなります。

有害金属は脳などに沈着し、認知症や神経疾患の原因になると言われていますし、アレルギーや自己免疫疾患などにも影響があると言われています。その観点からも亜鉛の役割の大きさがわかります。


亜鉛を多く含む食品はやはり『牡蠣』です。
たださまざまな理由で非効率ですので、チーズや卵黄、アーモンド、ピュアココア、ごまなどがお勧めです。

もちろん亜鉛が体にいいからと言って、これらの食材ばかり食べていても効果は出ません。あくまでもバランスの取れた食事が大前提です。

亜鉛は加齢とともに吸収率が低下するため、高齢者では低下している症例が多くなります。またお酒を飲む方はさらに低下しやすい状況となりますので注意が必ようです。

近年の研究で、ビタミンDとの関連が注目されており、ビタミンDの摂取不足と関係があるかもしれません。外出が減るなど活動性が低下することや、食事量が低下するなど、加齢による影響は亜鉛やビタミンDだけではありませんが、その影響を色濃く受けてしまう可能性が高いのが現状です。


いかかでしょうか。
3回に分けて、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛の紹介を行いました。
それぞれ物質の違いはありますが、不足する原因は、加工食品であったり、現代の生活スタイルであったり、共通する項目が多々あります。

健康維持のためには、まず食事です。

今こそ見直して、お金では買えない健康を維持していきましょう。