【小説】おいしいものを、すこしだけ 第2話
二度目に亜紀さんが倒れたときは、私もその場にいた。一緒に歩いていたら道の真ん中で亜紀さんがふらふらとしゃがみこんだのだ。この時は意識があって救急車を呼ばなくていいと言うので、タクシーで前回と同じ病院に行った。私は待合室の椅子に腰掛けて、世の中にまったく迷惑をかけない人というのはいないものだ、と痛感していた。
「清水さん」
病院の人に呼びかけられて、一瞬誰のことだろうと考えてから、亜紀さんの苗字だということに気づいた。そういえば最初のころはそう呼んでいた記憶がある。亜紀さんが