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【小説】おいしいものを、すこしだけ

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現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。 (全20回連載予定)
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記事一覧

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第15話

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晴れる
11日前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第14話

 元日の風邪以来、亜紀さんはあまり具合が良くない。寝たり起きたりしているうちに正月休みが…

晴れる
2週間前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第13話

 年末年始に何の予定もなくなったので、例年どおり帰省することにした。荷造りをしているとコ…

晴れる
3週間前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第12話

 思えばその日は朝からろくなことがなかった。    エスカレーターの故障であと一歩のところ…

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1か月前
2

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第11話

 ジロの仕事が忙しいことはもともとわかっていた。それでも夏前までは一応日曜日の休みは確保…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第10話

「萩原さんは給料分の仕事だけしていればいいから」  そう言ったのは深谷さんだ。私と同じ契…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第9話

 卒業してから最初にサッちゃんと会ったとき「じつは今ジロとつきあっている」と打ち明けると、ほらやっぱり、という顔をされた。 「どうせいつかそうなると思った。ジロは最初から日向子が好きだったからね」 「そうかな」悪い気はしない。 「いつから?」 「卒業式のすこし前」 「ジロから告白されたの」 「うん、まあ」  サッちゃんは詳しい経緯を根掘り葉掘り聞きたがったけれど、私は断固としてそれ以上は口を割らず、後はお互いの仕事やほかの同級生の近況を報告して別れた。

【小説】おいしいものを、すこしだけ 第8話

 年が明けて、卒論も無事に審査を通り、私はめでたく卒業が確定した。卒論の文献集めには一部…

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1か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第7話

 ひさしぶりに学科の飲み会に誘われたので行ってみることにした。  最近は就職活動もやる気…

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2か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第6話

 亜紀さんはめずらしく日曜日が休みだ。なぜか自分の本棚から絵本を何冊か抜いて、悪戦苦闘し…

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2か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第5話

「知ってる? ジロが栄養失調で倒れたって」  まったくどいつもこいつも、とテーブルの上に…

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2か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第4話

 しおれた花に水をやった時のように、私のつくった料理を食べて亜紀さんはみるみるうちに健康…

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2か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第3話

 亜紀さんは仕事を増やした。市内の大学図書館で夜間カウンター業務というのを見つけたらしい…

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2か月前
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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第2話

二度目に亜紀さんが倒れたときは、私もその場にいた。一緒に歩いていたら道の真ん中で亜紀さんがふらふらとしゃがみこんだのだ。この時は意識があって救急車を呼ばなくていいと言うので、タクシーで前回と同じ病院に行った。私は待合室の椅子に腰掛けて、世の中にまったく迷惑をかけない人というのはいないものだ、と痛感していた。 「清水さん」  病院の人に呼びかけられて、一瞬誰のことだろうと考えてから、亜紀さんの苗字だということに気づいた。そういえば最初のころはそう呼んでいた記憶がある。亜紀さんが