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ソフトテニスの試合動画は著作権法上保護されるか

弁護士ソフトテニス愛好家のふくもとです。

過去に「ソフトテニスの試合動画をYoutubeにアップする際の権利問題」というテーマで記事を書きました。

上記記事では、主に「放映権」という権利の解説をしました。

今回の記事では、「ソフトテニスの試合動画は著作権法上保護されるか」というテーマで、主に、ソフトテニスの試合動画が著作権法上の「著作物」に当たるかどうかという点を解説したいと思います。

1 著作権法の基本的理解について

著作権」及び「著作者人格権」とは、著作権法上の「著作者が有する著作権法上の諸々の権利のことを言います(著作権法第17条第1項)。

(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
著作権法第17条第1項

次に、「著作者」とは、「著作物を創作する者をいいます(著作権法第2条第1項第1号)。
さらに、「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法第2条第1項第2号)。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二 著作者 著作物を創作する者をいう。
著作権法第2条第1項第1号、第2号

この関係性を図示すると以下のように理解できます。

この記事においても、「著作権」、「著作者人格権」、「著作者」、「著作物」という用語は、上記の意味で用います。

2 ソフトテニスの試合自体が「著作物」に当たるか

ソフトテニスの試合や試合における選手のプレー自体は、「著作物」に当たらないと考えられます。
ソフトテニスの試合や試合における選手のプレー等は、定められたルールの中で競争の目的で行う行為であり、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないと考えられるからです。

そのため、ソフトテニスの試合でプレーする選手は、「著作物」を創作しているとはいえず、ソフトテニスの選手が、出場した試合について「著作権」・「著作者人格権」を有しているとはいえません。

なお、以下は補足的ですが、著作権法には、「実演家」の権利なども定められています(著作権法第90条の2以下)。

ーー 「実演家」の説明 ーー
実演家」とは、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他「実演」を行う者及び「実演」を指揮し、又は演出する者をいいます。
実演」とは、「著作物、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいいます。
著作権法第2条第1項第3号

しかし、先に述べたようにソフトテニスの試合試合は「著作物」ではないので、ソフトテニスをプレーする選手は、「著作物」を演じているともいえません。
したがって、ソフトテニスの選手は「実演家」の権利を有しているともいえません。

3 ソフトテニスの試合動画が「著作物」に当たるか

ソフトテニスの試合動画が、「著作物」に当たるかどうかは、その動画の内容に創作性が認められるかどうかによって異なると考えられます。

「著作物」か否かの判断のポイントとしては、撮影時のカメラワークやカメラアングルに創意工夫があるか、編集におけるゲームカウントやポイントの表示や、リプレイの挿入などの創意工夫があるかといった点から判断されることになると考えます。

反対に、固定カメラで撮影したもので、何も編集していない試合動画は「著作物」とはいえない可能性があります。

ーー 【参考事例】総合格闘技の試合を撮影、編集した映像が無断でニコニコ動画にアップロードされた事案において、当該映像が「著作物」に当たるかが争点となった事例 ーー
裁判所は、次のとおり判断して「著作物」に当たると認めた。
”作品11番、26番及び68番は、いずれも、総合格闘技であるUFCの大会における試合を撮影した動画映像であり、各場面に応じて被写体(選手、観客、審判等)を選び、被写体を撮影する角度や被写体の大きさ等の構図を選択して撮影・編集され、映像に、選手等に関する情報等を文字や写真により付加する等の加工を加えたものである……。このように、作品11番、26番及び68番は、試合の臨場感等を伝えるものとするべく、被写体の選択、被写体の撮影方法に工夫がこらされ、また、その編集や加工により、試合を見る者にとって分かりやすい構成が工夫されているものということができるのであって、思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから、映画の著作物に該当する”
東京地方裁判所平成25年5月17日・判例タイムズ1395号319頁

ソフトテニスの試合動画が「著作物」に当たる場合には、撮影者等に「著作権」・「著作者人格権」が発生する可能性があります。
この点の詳しい内容については、別記事を作成して、解説しようと思います。

4 ソフトテニスの試合動画が「映画の著作物」に当たるか

ソフトテニスの試合動画が、「著作物」に当たるとして、著作物の例示として著作権法上に挙げられている「映画の著作物」に当たるかどうかも問題になります。

なぜなら、「映画の著作物」に当たるかどうかで、法的効果に少し違いが生ずるからです。

ーー 「映画の著作物」の定義 ーー
(定義)
第二条 
3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
著作権法第2条第3項

「著作物」に当たるソフトテニスの試合動画は、一般的に「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」という要件を満たすと考えられます。

また、撮影・編集したソフトテニスの試合動画が「著作物」であることを前提として、その試合動画が、電磁的記録上にデータとして保存され、再生可能な状態であれば、「物に固定されている著作物」という要件を満たすと考えます。

ソフトテニスの試合動画が「映画の著作物」に当たる場合の権利等についても、詳しい内容については、別記事を作成して、解説しようと思います。

5 まとめ

ソフトテニスの試合動画が「著作物」に当たるかどうかは、撮影時のカメラワークやカメラアングルについての創意工夫、編集におけるゲームカウントやポイントの表示、リプレイの挿入などのについての創意工夫の有無によって判断されるといえます。

「著作物」に当たる場合に発生する権利の具体的な解説については、別記事を書こうと思いますので、良かったらまたお読みください。

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efesによるPixabayからの画像

※記事情報を信頼したことによる損害について一切の責任を負うものではありません。また、個別具体的な事案については、弁護士等の専門家にご相談ください。

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