7月4日。君の笑顔が消えた日。
*あるグループの楽曲の魅力をフィクションストーリーに添えて発信。
「無視しないでよ！！！」
あの日をきっかけに、
君は僕に話しかけなくなった。
僕が話しかけても、
君は応えてくれなかった。
なぜだろうと僕は疑問に思って、脳内日記を辿った。
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【4月17日、曇り。】
「あれ、なんでクミがいるの！？」
いつも朝8時に出てしまうクミが布団の中でゴロゴロしている。さては寝坊だな！？と思い、昨夜から置いてある水で喉を潤して、「クミ起きて〜！遅刻するよ！」と叫んだ。
すると、クミはかけ布団をバサッと振り払い、『おはよう、さとまる！今日からリモートワークだから、一緒にいる時間長くなるよ！』といつもの笑顔で話しかけながら、犬の僕を抱きかかえる。
時計の針が30分を回ると、クミは、お皿にシリアルと牛乳を入れ、もう一つのお皿には僕のドッグフードを入れる。
8時45分になると、クミは、パソコンと電源ケーブルを仕事のカバンから取り出し、いつもは使わない学習用のデスクに座って、パソコンの電源を起動した。
それから約９時間、クミは、トイレと飲み物とる以外、ずっと背中を僕に向けて、パソコンに向かっている。
なんだかかっこいい。
これが仕事をしているクミ。
かっこいいな。
『もう夜！？やっぱ家だと集中できるな〜！』
いつもと違い、夜6時なのに家にいるクミ。
『さとまる！一緒にご飯食べよ！』
『さとまる！おかわりいる？』
『さとまる！お手！おすわり！』
『さとまる！ひざおいで！』
『さとまる！一緒に寝よ』
ずっとクミと居れる。嬉しい！嬉しい！
こんな日、一生続いたら嬉しい！
笑顔なクミがずっと見れるなんて！
嬉しい！嬉しい！って、
ワン！ワン！と僕はクミに吠える。
【4月18日、晴れ。】
「ふわ〜、本当に幸せ！」
この日のクミはいつもの休日以上に元気で、僕を抱きかかえながら、iPadでずっと動画観て、笑いこけたり、号泣したり。広告やエンドロールが流れると、クミが笑顔で僕の顔にクシャッとしてくれる！
どうやら、僕のことが大好き過ぎて、
家にいるようになったのかもしれない！
大好き！大好き！って、
ワン！ワン！と僕もクミに吠える。
【5月17日、晴れ。】
「クミ、散歩したいよ。。。」
外でクミと散歩するのが何よりも楽しみだった僕はちょっぴり元気がなかった。
クミがリモートワークを初めて、クミといる時間は何倍も増えたけど、その代わりに、クミが散歩に連れて行ってくれる時間も減った。
『さとまる〜、今日も疲れた〜』と、
いつもように僕の顔をクシャッとする。
毎日、毎日、時間の概念がないのように
9時間集中して仕事しているクミ。
それでも仕事の後に僕に向けるクミは笑顔だった。今まで見たことないくらいの、笑顔以上の笑顔だった。
だから僕も笑顔になれた。
ありがとう！ありがとう！って、
ワン！ワン！と僕は吠える。
【7月4日、雨。】
「バサッと。」
クミがかけ布団を振り払う音。
朝一番のハグをしてくれる合図。
おはよう！おはよう！って、
ワン！ワン！とクミに吠えた。
クミは、僕のドッグフードを茶色いお皿に入れて、僕の前に置いた。
おはよう！おはよう！って、
ワン！ワン！とクミにまた吠えた。
クミは、仕事用の机に座り、パソコンの電源を起動した。
おはよう！おはよう！って、
ワン！ワン！とクミにもう一度吠えた。
クミは、ひたすら僕に背中を向け続けた。
「なんで？」
「無視しないで！ クミ。。。」
昨日まであんなに笑顔だったのに。。。
昨日まであんなに話しかけてくれたのに。。。
どうして突然。。。
全く訳わからなかった。
別に何か変化あったわけじゃない。
いつもの時間に起き、
いつもの時間にご飯を食べ、
いつもの時間に仕事をして。
いつも通りのキレイな部屋。
いつも通りの美味しそうな香り。
いつも通りのクミの姿。
散歩も数ヶ月前と変わらず、週3回連れてくれる。
変わったことはたった一つ。
その日から、
一言も、
ほんの一言も、
僕に話しかけなくなった。
【8月6日、雨。】
「クミ、誕生日おめでとう！！」
朝一番に、
おめでとう！おめでとう！って、
ワン！ワン！とクミに吠えた。
「うるさい、さとまる。」
久しぶりのクミの声がそれだった。
いつもと変わらない部屋。
いつもと変わらない美味しそうな香り。
いつもと変わらないクミの姿。
「うるさい、さとまる。」
この言葉と笑顔が消えた事以外は、
いつもと変わらない日常。
【8月23日、くもりのち晴れ。】
あの日から、僕は寝てばかり。
毎日7時とか8時に起きてた自分が嘘かのように、今日も12時に起きる。
いつもと変わらない部屋。
いつもと変わらない美味しそうな香り。
いつもと変わらないクミの姿。
"桜並木が恋をして、風なびき、葉が擦れ、音になる
それぞれの道をつくり、バラバラのリズムが動き出すのさ"
*引用1
いつもは聞かない音？
いや、いつもは聞かない音楽が聞こえてくる。
タラタッタッと、楽器の音。
パッパッパッと、手拍子。
ふわりと、やさしい歌声。
"ハミングしながら 服をまとえば 鮮やかな私 静かに生まれる"
*引用1
いつも聞いているような、
いつも感じているような、
でもなぜか忘れかけているような、
心弾むやさしい歌。
そんな歌が聞こえてきた。
『さとまる、おはよう。』
と聞こえるような、
そんな歌が心地良くてまた寝てしまった。
【8月24日、晴れ。】
『さとまる〜、起きて〜！』
朝8時。
久しぶりの笑顔なクミの声が聞こえた。
クミはかけ布団をバサッと振り払い、『おはよう、さとまる！ありがとう！！』といつもの笑顔で話しかけながら、犬の僕を抱きかかえた。
時計の針が30分を回ると、クミは、お皿にシリアルと牛乳を入れ、もう一つのお皿には僕のちょっと高いドッグフードを入れる。
8時45分になると、クミは、パソコンとケーブルを仕事のカバンから取り出し、僕の側にテーブルを置いて座り、パソコンの電源を起動した。
この日から、なぜか、
いつもの笑顔なクミに戻った。
いつもと変わらない部屋。
でも、毎日、クミは、
色々なことを話してくれた。
いつもと変わらない美味しそうな香り。
でも、毎日、クミは、
色々な表情で話してくれた。
いつも変わらないクミの姿。
クミは、
毎日違う笑顔なクミだった。
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なぜ急に笑顔を取り戻したのだろう？
クミって不思議だ。
人間って不思議だ。
毎日変わらない日々を過ごしただけだけど？
ああ、そっか、一つ変化があった。
8月23日からこの曲がよく聴こえるようになったことだ。
この曲が流れるようになってから、
毎日変わらない日常なのに、
クミは、毎日違う笑顔なクミになった。
僕が見る部屋・香り・クミの姿が変わったんじゃない。
部屋・香り・僕の姿を視るクミの心が変わったんだ。
【終わり】
【今回ご紹介したグループ】
・RYUTist
・新潟の４人組アイドルグループ
・2011年結成
*引用1：RYUTist「ALIVE」の歌詞から一部引用。
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