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旅先で出会った忘れられない本屋を4つ

一人旅は気楽だ。予定なく突然行けるし、気に入った場所に何時間いてもいい。私の場合は本屋に行くのが好きだ。狙って行くわけじゃないけれどつい立ち止まってしまう。

日常を離れて旅先で手にとる本は象徴的な意味があるような気がする。ずっとしまいこんでいた苦しさや置き去りしていた考え事や忘れていた興味。手にとる本がそういうことに気づけと言っているような気がする。

重たくなるから何冊も買えないしどの本を持って帰ろうかと真剣に悩む。その全てがよい思い出になる。

旅先で出会った素敵な本屋を4つ選んでみました。

大分県大分市 カモシカ書店

1階の入り口には古本があり、ポスターがたくさん貼ってある階段をのぼった2階は予想以上に広い。本棚には新刊と古本が混じる。奥にはカフェコーナーがある。メニューは手書きで学生のようなテンションにいささか驚く。

屈折した気持ちを肯定してくれそうな、繊細なテイストのマイナー系漫画・雑誌がフロントに。大学生数人が店番をしながら店主を囲んでいる。この店はきっと彼らの精神的な拠り所だ。

どのジャンルも入門書が置いてあるのも若い人を意識しているのか。優しさを感じた。

栃木県益子町 内町工場

器の店が並ぶ益子の通りにぬくっと現れた小さな本屋。

店の印象は一言でいってエロス。店の人がぎょっとするほど鼻筋がとおったイケメンだった。薄暗い店内の光のなかで寡黙に本をめくる姿に思わず目をそむける。こんな小さな店になぜにこんなイケメンが。。。

本は画集や日記などアート系のものが多く未知のものばかり。使い込まれた古い道具が置いてあって、いっそう、時の感覚が麻痺する。

2時間くらいいて、外国製キャンディーの包装紙の写真集を買った。なぜだろう。予想外のところで深入りしてしまう、誘う本屋。いろいろなマルシェの開催を知らせるフライヤーが置いてあって、益子周辺は住みやすそうだなと感じた。

福岡県福岡市 ブックスキューブリック

福岡の大通りを歩いていて見つけた一見普通の本屋。地元の駅でお母さんと寄っていたような町の本屋なのだが、本棚を見るとセレクトに驚いた。隣あった本がテーマでつながっている。連想ゲームのように本棚から意図が伝わってくる。

ここで、鷲田清一さんの『待つということ』という本を手にとった。

当時、長い間出口が見えない話に悩んでいた。イライラするし、行き場のない感情で心がやられそうだったが、この本はもしかしたら今の時間に意味があるのかもしれないと予感させてくれた。その気づきは旅の一番のお土産になった。

小さな町の書店で2006年初版の哲学者の本がメインの場所に並んでいるなんて普通はない。店主はとてつもなく純粋に本を愛し信じているんだと思う。

和歌山県田辺市 森のふくろう文庫

熊野古道を歩いていたら、一軒の庭先に「古本屋、本日オープン」という小さな看板があった。引き寄せられるように入ったら店から木の匂いがした。人の良さそうなベストを着たおじさんが迎えてくれた。退職後にUターンして作ったそうだ。

小上がりの空間に暖炉、庭先のベンチやコーヒーコーナーなど長居したくなる配慮がある。地域にはじめての古本屋だそうだ。

熊野土産が置いてあり観光客も意識している。ゆっくりと、中の人・外の人が交わる場所になるんだろう。オープン初日にあやかって豚汁とシュークリームをごちそうになる。

自然や植物の本が充実している。聞くと店主はそういう仕事だったそうだ。自然好きな自然体な店主が蒔いた種はこれからどうやって育っていくのだろう。

これからもあちこち行って素敵な本屋に出会えたらいい。

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