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SFアニメ『LAST EXILE』(2003)

 『LAST EXILE(ラストエグザイル)』は、テレビ東京の深夜アニメ帯で2003年4月7日から9月29日まで、全26話で放送された、GONZOの10周年記念作品として作成されたオリジナルアニメです。2024年1月現在、U-NEXTで視聴できます。

 そもそも、株式会社ゴンゾ(GONZO)とは、ガイナックスを退社した村濱章司が2000年に設立した会社で、CG技術を駆使したクオリティの高いアニメーション作品を制作しています。海外でも高い評価を得ています。

監督の千明孝一は、安彦良和監督の映画『ヴイナス戦記』(1989)で初演出、『新機動戦記ガンダムW』の演出、絵コンテを手掛け、日本のアニメ業界初のフルデジタルアニメとなるOVA作品『青の6号』で演出を担当しています。『LAST EXILE』でも、CGを使用したダイナミックなアニメーションが堪能できます。

 私は、とても気に入ってるアニメなのですが、タイトルを知っている人に出会ったことがありません。まずはこのオープニング映像を見てください。

 物語は、ざっくり言えば『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)、『宇宙海賊キャプテンハーロック』、『天空の城ラピュタ』(1986)など、いくつか連想させるものが含まれています。

 そのため、全体的に状況の説明が不足気味なのですが、見ていればなんとなく話についていくことはできます。しかし、地図や設計図なども出てきますが、説明無しで一瞬で画面が切り替わってしまいますし、最後まで見終わっても釈然としない部分がでてくるので、もう一回見直したりするのですが、やっぱりよくわからない部分はいくつも存在します。

ホライゾン・ケーブってなに?

 物語は、最初に「アナトレー」と「デュシス」の2つの国が、度重なる戦争を行っており、「ギルド]と呼ばれる組織がその調停役でありながら、公平さを欠いていること分かってきます。そして、戦艦「シルヴァーナ」の艦長アレックスは何かのトラウマを抱えています。

 主人公でパイロットのクラウスと、ヒロインでナビゲーター兼メカニックのラヴィの二人が、ギルド四大家系の一つハミルトン家当主の娘アルヴィスの保護者となり、「シルヴァーナ」と関わっていくことになります。


 以下は、概略のみの記述にとどめていますが、ネタバレを含みますので、全部自力で読み解きたいというこだわりの強い方は、見終わってから読んでください。


世界観

グランドストリームの地図

 世界は「アナトレー」と「デュシス」の両極に向かい合う2つの国に別れています。その間にはグランド・ストリームと呼ばれる、雲に覆われた激しい気流の流れが存在しています。矢印は、「デュシス」から「アナトレー」に向かうグランド・ストリーム内の航路を示しています。

 この地図では、下側が「アナトレー」で、その上空にグランド・ストリームがあり、それを超えた上部に「デュシス」が上下逆さ向きに存在します。つまり、「アナトレー」と「デュシス」は、お互いの上空で繋がっており、その間はグランド・ストリームによって阻まれています。そして、全体は「砂時計」のように回転する筒状になっています。

 ただし、地上から見上げても、グランドス・トリームを観ることはできないので、地上から見えないように何らかのホログラムで覆われているようです。

 なお、ギルドは大地を持たず、空中に浮遊する建造物の中にあります。

前史

 プロダクションデザインを担当した小林誠さんのツイッターによると、この物語の始まりは以下のようになっています。

 地球温暖化により、地球が居住不可能になることが予見され、建設された人工惑星コロニー「プレステール」が建造され、護衛艦「ハイラグリオン」4隻と「エグザイル」と呼ばれるワープ装置6隻も建造された。

 予想外の太陽の強大なフレアが発生し、エグザイルは緊急ワープを行った。ワープ先のウルフ359恒星系でも巨大なフレアに見舞われ、ハイラグリオン3隻とエグザイル5隻が大破。エグザイルの残る1隻も艦首を失うが、プレステールを牽引し退避した。

 当初、ハイラグリオンとエグザイルはプレステール内に干渉しないよう外部にいた。ハイラグリオンは「ギルド城」として再構築されたが、エグザイルは損傷が大きく、修復のために2隻は、「ディシス」の湖の下にある通路(ゲートウエイ)を通ってプレステール内部へ侵入する。

 プレステール内では、大量のエネルギーを消費する文明を否定する思想から、高度な機械類は用意されておらず、中世時代程度までの文明を維持する予定だった。しかし、「アナトレー」と「デュシス」は、水素やヘリウムを使用した飛行船を発明しており、交易が行われていた。それを見た「ギルド」は、ハイラグリオンの反物質を使用した力場発生装置(クラウディアユニット)を供与し、代わりにエグザイルの修復のために「コクーン」の資材を要求した。エグザイルは、コクーンが完成すると、グランド・ストリームを発生させ、その中で自己修復の長いフェーズに入った。

 クラウディアユニットを得て両国の行き来が容易になったが、軍艦を建造して限られた資源を奪い合う軍事紛争が起きるようになった。ギルドは、紛争を止めるべくクラウディアユニットを強制的に分離させたため、両国の船は落下した。以後、ギルドは両国の政治に介入する役割(マエストロ)となる。

 ギルドはハミルトンダゴベールバシアヌスエラクレアの四家の合議制によって運営されていたが、若くしてエラクレア家の当主となったデルフィーネがギルドを制圧。他の3家の当主をギルドから追放し、ギルドの全権を握った。以降はデルフィーネによる専制君主に変貌した。さらに、デルフィーネはプレステールの運営には関心がなかったため、アナトレイは温暖化による旱魃かんばつが発生、デュシスは寒冷化で人が住めなくなり、世界は混乱を増して行くこととなった。

 しかし、この異常気象の原因は、エグザイルがプレステール内でグランド・ストリームを発生させ修復作業を行っているのが原因かもしれない。

クラウディア

 クラウディアは、プレスターで採掘される鉱石です。クラウスとラヴィーが育ったノルキアは、クラウディアが採掘される山の中腹にあります。

ノルキア

 クラウディアをアルコールに溶かし、蒸気エンジンの燃料として使用します。また、クラウディアを水に溶かしたクラウディア液は、クラウディア・ユニットの中で加熱・圧縮されると揚力が発生します。ヴァンシップのエンジンにはクラウディアを循環させるパイプがあり、揚力と推力の両方を発生させています。

 ヴァンシップに搭載されたクラウディア機関は、ギルド四大家系の一つ、バシアヌス家の当主マリウスによってアナトレーにもたらされました。

ヴァンシップのクラウディア燃料

 ギルドのスターフィッシュのコックピットは、それらとまったく異なるコックピットです。

スターフィッシュのコックピット

 軍艦に使用されているクラウディア・ユニットは、ギルドから提供されたもので、ギルドのエンジニアたちが操縦と警護のために武装して同乗しています。ユニット単体で船として機能するので、エンジニアたちの操作でユニットだけ分離させてギルドに帰還することができます。

クラウディア・ユニット内部

 なお、戦艦シルヴァーナのクラウディアユニットは、ギルド四大家系の一つダゴベール家の当主レシウスによって持ち込まれたもので、ギルドの支配を受けないよう改良されています。

シルヴァーナのクラウディア・ユニット

 また、アナトレーで建造された戦艦ウルバヌスの動力は、ヴァンシップに搭載されているクラウディア・リアクターを元にして製作されたものなので、ギルドの影響を受けません。

各話のタイトル

 各話に付けられているタイトルは、チェス用語が使われ、すべて英語表記になっている。

続編

 この物語には、続編『ラストエグザイル-銀翼のファム-』があります。


「ラストエグザイル」シリーズの百科事典

 設定資料から作成された詳細なデータが公開されています。

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