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知らない人には教えたいアカマイの話

 「赤米」じゃないです。「Akamai」はハワイ語で「賢い」という意味の単語だそうです。

 Akamai Technologies, Inc.は、インターネットに革命を起こすサービスを生み出したアメリカの会社です。

Akamaiの歴史

 それまでのインターネットのパフォーマンスは、サーバーの性能と固定的な回線のルーティングによって決められており、インターネットユーザーのストレスとなっていました。そこで、コンテンツを分散型サーバーの大規模なネットワークで効果的なルーティングとコンテンツの複製によって解決する方法を見つけ出したのです。

 1998年8月20日にAkamaiを設立。1999年3月に「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」のトレーラーの独占配信で市場の注目を大いに集め、4月から商業サービスを開始しました。

 会社の経営状態も上々で、1999年10月にはNASDAQ株式市場に上場。2001年には米国の代表的な小型株指数」ラッセル3000インデックスとラッセル2000インデックスに、2007年にはS&P 500インデックスに組み込まれ、時価総額も上がってきました。

CDNの仕組み

 CDNは、レイテンシーを最小化します。レイテンシーとは、Webページや動画ストリームにアクセスして、それが自分のデバイスに完全に読み込まれるまでの遅延のことです。この時間がちょっとでも長いと感じると、ストレスが溜まります。Webサービスの提供者やネットワークコンテンツの提供者は、ユーザーが受けるストレスが発生しないよう、あるいはできるだけストレスが小さくなるよう、CDNを導入します。

 レイテンシーを最小化するための1つの方法は、コンテンツを配信するサーバーをできるだけユーザーの近くに置くことです。ワールドワイドのコンテンツであれば、コンテンツのキャッシュを世界中に多くのサーバーを分散して配置します。そして、ユーザーのいる場所に一番近いサーバーのキャッシュが選ばれるように設定します。

 もう1つは、ネットワークの最適化です。遅延の少ない経路を自動的に判別して配信することで、ユーザーに最適なネットワーク環境を提供することができます。

 このような仕組みは、コンテンツ提供側にもメリットがあります。コンテンツは、複数のサーバーにキャッシュされるため、元のサーバーの負荷が軽減されます。そのため、コンテンツ提供者の保持するサーバーをピーク時に合わせて過剰に性能増強する必要がありません。また、サーバー増強の費用よりCDNにかける費用のほうが安くすみます。

どうやってサーバーを各国に展開したのか

 Akamaiの提供するCDNサービスは、135ヶ国以上に展開されている役365,000を超えるサーバーのネットワークです。自社所有のサーバーの数は、多くの企業が非公開にしているのですが、Akamaiは公開しています。

 これだけのサーバーを世界各国に展開するには、世界70ヵ国以上のインターネットプロバイダー(ISP)と契約し、ISP内やインターネットエクスチェンジ(IX)にサーバを設置しています。

 つまり、サーバー時は自前ですが、データセンターは借り物なのです。

Akamaiのテクノロジー

 Akamaiは、世界中のネットワークを安全に、快適に使うための様々な技術とサービスを提供しています。目指しているのは「インターネット全体の信頼性向上」です。

 Akamaiは、既存の技術だけでなく、次々と大手の企業を買収し、新しい技術を自分のものとしてきました。

1.セキュリティ

 Webサイト、アプリケーション、APIのセキュリティや、セキュリティの管理、監視など包括的なマネージングサービスを実現。「2022 Gartner® Magic Quadrant™ for Cloud Web Application and API Protection」レポートで「リーダー」に選出されています。

2.デリバリー デジタルエクスペリエンス(DX)の強化

 世界各地に分散したクラウドストレージを使用して、コンテンtンツを安全に保存、保護し、優れたパフォマンスを実現するオンネットエッジ配信による上質な動画をユーザーに提供しています。

 また、動画配信のパフォーマンス、視聴者のエンゲージメント、および視聴者のふるまい分析をおこなっています。

3.エッジコンピューティング エンドユーザーの近くでWebアプリの構築

 サーバーレスコンピューティング向けの世界最大のエッジプラットフォームで、エンドユーザーに最も近い場所でサービスを提供できます。ハイブリッド環境またはマルチクラウド環境全体で活用できる柔軟性もあります。

 また、継続的な拡大やトラフィックの急増によるインフラの拡張も対応でき、ピーク時や規模を想定してリソースを準備する必要なく、使用した分だけ料金を支払う事ができます。

Akamaiのライバル

 CDNを提供する企業は、Akamai以外にもいくつかありますが、ライバルと呼べる Cloudflare と Amazon CloudFront があります。INTRICATELYの2020年8月のブログでは、シェア率で CloudFlareがダントツで、Amazon CloudFrontが続きます。

INTRICATELY BLOG

 Akamaiは、CloudflareやAmazon CloudFrontとの競争に破れたのでしょうか。

 Akamaiは1990年代からCDNのマーケットリーダーとして業界を引っ張っており、競合他社よりも長く事業を展開しています。そのため、収益の面では、他のCDN企業を大きく上回っています。また、Akamaiは、中堅企業の顧客よりも大規模なエンタープライズレベルの顧客を持っており、業界全体の収益の65%から70%を得ています。非常に堅実な業績の伸びを見せています。

 コストから見ると、中堅企業の大多数はCDNサービスに月額1,000ドル未満を支払っていますが、大企業は中小の企業より多くのコンテンツを持っているので、約700の企業はCDNに毎月10万ドル以上支払っているのです。

 インターネット・トラフィックでは、世界全体の最大時で2割をAkamaiが占めており、「インターネット会の巨人」と言われています。

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