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私が変わったことにより、軽い気持ちで見ていたコメディ映画がサイコホラー映画に変身した話

同じ映画でも、自分の立場や環境の変化によって、その映画の感想や印象が変わることが多々ありますね。
子供のころ見ていた映画が大人になってみると新たな発見があったり、
子を持つ親になることで感情移入先が変わったり…。
私自身、十代のころに胸キュンした恋愛映画が、最近見直して、
「いや、この主人公、脈無しじゃねぇか」
と、作品の根本を否定することも多々あります。
(最低な大人だな)

その中でも今回は、ある経験をきっかけに、コメディ映画がサイコホラーにしか見えなくなった話です。

■思い出の映画『南極料理人』概要

映画『南極料理人』は、2009年に堺雅人さん主演で上映された邦画です。
南極地域観測隊に料理人として参加した西村淳さんが書かれた著書を原作とした映画で、観測隊として派遣されたチームの物語を、様々な料理を中心に描かれています。

1997年という、南極の観測としては、昔ほど命がけでもなく、でも現在ほどネットが普及されていないため通信手段や娯楽も限られた中で、多様性あふれた性格の登場人物が淡々と業務をこなしながら任務を遂行する話です。

大恋愛もなく、敵の侵略もなく、隕石が落ちてくることもない、観測隊のおじさんたちの、平和で笑える日常です。

■2009年に見に行った時の感想

映画館で爆笑しました。
個人的名シーンは、きたろうさん演じる金田さんとラーメンのエピソード。
真夜中にインスタントラーメンを食べているきたろうさん。北極の地で買い出しが出来るわけもなく、いつしかラーメンは底をつきます。
その後、禁断症状が出たのか、夜中に調理担当の堺雅人さんの部屋で、目に涙を浮かべながらラーメンが食べたいと訴えるその切ない表情が、「かわいそう」と「お前が食ったからだろ」が入り交じり、思わず笑ってしまいます。

また、終盤には、水は貴重だからと使用を制限されているのに、お湯を出しっぱなしで豪快に頭を洗ったり、冷蔵庫のバターをこっそりとかじりつく隊員がいたり、遠距離恋愛中の彼女に電話で別れを告げられ、極寒の外に飛び出し「渋谷とか行きたい」と、何でもない日常を夢のようにかたる夢見る大学院生がいたりと、それぞれのゆるいドラマが連鎖して大笑いさせてくれます。

レビューでも
「何も起こらない」
「安心して楽しめた」
といった内容で高得点のものが多くみられます。

■最近見たら恐怖でしかなかった


2022年、ネットフリックスでも南極料理人が見られるということで、「なにも考えずに見るにはちょうどいいなぁ、おなか抱えて笑いたいし」という軽いノリで視聴。
しかし、途中で視聴を断念しました。
北極という、マイナス55度の閉ざされた空間で、人がどんどんと壊れていく様子が恐怖でしかありませんでした。

好きなラーメンが食べられない禁断症状で、夜中に調理担当を起こして泣きながら訴える姿、人に迷惑がかかるのをわかったうえで、ルールを犯して水を無駄に大量使用するシーン、ただただ油の塊を丸かじりする姿、死ぬかもしれない屋外に勢いだけで出ていく様子など、一つ一つのシーンが密室の中で精神崩壊している人たちに見え、それが、穏やかなBGMとの不協和音を起こし、サイコホラー映画のように感じられました。

■約10年で何が変わった?


13年の間で、どんな心境の変化があったのか…。
ひょっとすると、コロナで、家を出られない、出てはいけないという状態を経験し、そのストレスを味わったために、観測隊の方々のストレスを共感し、自分のなかで増幅させてしまったかもしれません。
(共感脳の欠点でもあります"(-""-)")

いずれにしても映画は何も変わっておらず、変わったのは私。
映画を見ることで私自身がどのように変わったかを知ることができました。
これからも映画を楽しみつつ、自分の感性を大切にしたいです。

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