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自己アピールにおける趣味ってなんだ。

「もしかして、無趣味なのでは?」という疑惑を、何度も否定して生きてきたが、この自粛期間ではっきりした。無趣味である。

受験生だった頃、この無趣味疑惑をよく感じていた。自己アピール、面接シートどこにでもいる趣味の欄にいつも頭を悩まされた。こうしたお堅い場面での趣味というのは、何を書いてもはずはなく、趣味=特技だ。

読書と書いたからには、本について語れることを用意しておかなければならず、楽器と書いたからには、かなり長く習っていたとか何かの賞を取ったなどの華々しい経歴もセットで求められる。ような気がしてしまう。本当のところはどうなのかは分からない。面接官の真意なんてものは、受験生にはわからないものだ。

面接シートの好きな科目の欄に、地理と書いたら「あなたは自分の足で国境をまたいだことはある?」と聞かれたことがある。「電車でなら……」と、どっちつかずの答えを返したら、満足そうにうなずいて何かをメモしていた。合格したからいいものの、落ちていたらきっと、嘘でも「あります」と答えればよかったと後悔しただろう。

受験という堅い場面以外でも、趣味というのは鬼門だ。サークルで、ラジオ(のようなもの)を収録しようとなり、第一回目の自己紹介は、なんのひねりもなく趣味の話題から始まった。こういう時に、話が広がる趣味というのも難しい。全員がひねりすぎても良くないし、その場に4人いて、読書、映画、カフェ巡り、音楽を聴く、なんて言われた暁には地獄である。私ならそんな番組聞かない。さてどうしたものか、悩んでいると、一人目に「歯磨き」と言われてしまった。

初手からトリッキーすぎる。歯磨きが趣味ってなんだ。一日に五回、全部違う歯磨き粉でも使うのか。後の二人の答えは忘れてしまったが、歯磨きよりは特異なものではなかったと思う。
頭に浮かんでいていた候補もすべて吹き飛び、咄嗟に出たのは「お風呂で歌うこと」だった。

趣味なんですか大喜利のなかでも、下の中くらいの答えは見事に盛り上がらず、そのまま話は流れていった。

この生活をしているの成果として、何か一つでも堂々と趣味として掲げられるものを見つけたい。とりあえず、明日はいつもより集中して歯を磨いてみようと思う。

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