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「声たちの島」 ロバート・ルイス・スティーヴンソン

高松雄一・高松禎子 訳  バベルの図書館  国書刊行会


このバベルの図書館編では、「声たちの島」、「壜の小鬼」、「マーカイム」、「ねじれ首のジャネット」収録。
これら4編に、ヴィヨンが登場する話「その夜の宿」と、「水車屋のウィル」の2編を加えた短編集が岩波文庫にある(2011年出版)。訳者は同じ。

スティーヴンソンは「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」の作家だけど、祖先は灯台作りで(「灯台守の話」を参照)、晩年はサモアに住んだ。サモアでの植民地批判なども書いているみたい。この作品集の中にも「南洋もの」あり。
(2015 08/23)

「灯台守の話」はこちら ↓



「声たちの島」


昨夜バベルの図書館シリーズからスティーヴンソンの短編を1,02編くらい(笑)読んだ。この短編集は4編から成っていて、その選択基準は編者ボルヘスの印象の残り具合からだそう。
そのボルヘス曰く、「ジキル…」の話はスコットランドにある、誰かが死ぬ直前に遠くの知り合いのところに分身が現れるという言い伝えの変容で、こういう深層はジョイスやオブライエンのアイルランドとも共通している…南洋もの2編。都市もの?2編。

前者からの標題作「声たちの島」は魔術師とその婿という幻想話を構造的にはきれいにぱたぱた織り込んだような話。魔術師の家がかなり西洋化されてたり、紙幣制作浜辺?が出てきたりと単なる南洋幻想ものだけではない近代批判もあるような短編ですが、そこについてはやはり?ボルヘスは沈黙…
(2015 08/25)

「壜の小鬼」

2つのハッピーエンドの比較
スティーヴンソンの2つの「南洋」ものを読んだ。2つとも最後は主人公たちが苦境を脱して終わるのだけれど、一昨日読んだ「声たちの島」は魔術師がいつまた戻ってくるかもしれないという保留付きだったのに対し、昨日読んだ「壜の小鬼」はもっと明らかな脱し方。これは主人公の性格の違いによるところなのかもしれないけれど、最後に出てきた水夫長はひょっとしたら壜の小鬼の親分かなんかで、人間界から壜を取り返しただけなのかも(そっち側から読み返す或いは書き直すのも楽しそう?)。

この話の核は、死ぬまで持っていると地獄落ちのこの壜を他人に売り付けるのは買った時より安く売らなければならない、というルールで、ナポレオンやクック船長から最後の水夫長に向かって安くなるに従って、人物像や背景がだんだん細かく惨めになっていく…というのが読みどころ。
(2015 08/26)

「マーカイム」


昨夜のスティーブンソンは「マーカイム」。序文でボルヘスが二重人格或いは分身的な短編が含まれるとしていたのは、まあこの作品だろうけど、読みどころはそれより?前の殺人者の心理描写にある。
(2015 08/27)

「ねじれ首のジャネット」


スティーブンソン短編4つ目終了でこれも読み終わり。「ねじれ首のジャネット」…他のイギリス短編集か怪奇小説集かなんかに入っていたかも…は死骸?にとりついた悪霊の話。黒い男が悪霊だというのはスコットランドの古くからの伝統だという。
まあ、とにかく、(大)男が立ち去るイメージが最初と最後にあるのね、この短編集は。表紙も合わせて…
(2015 08/28)

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