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「バロック協奏曲」 アレホ・カルペンティエール

鼓直 訳  フィクションのエル・ドラード  水声社

以前サンリオ文庫で出ていたものの復刊、解説は寺尾氏。ヴィヴァルディのオペラ「モテズーマ」(コルテスのアステカ征服を題材とした)を中心に、新大陸人とヴィヴァルディ、ヘンデル、スカルラッティが、ストラヴィンスキーやサッチモについて語り合う?? 
カルペンティエールはこの作品と「方法異説」「春の祭典」を並行して書いていたという。

メキシコの鉱山主とキューバの楽士がヨーロッパを行く


一昨日夜くらいからカルペンティエールの「バロック協奏曲」を読み始め。今のところ、メキシコの鉱山主である旅人が、キューバで黒人の楽士?雇ってヨーロッパへ向かったところ。マラカスとか使う音楽にスペイン語は似合わないとか、マドリッドはメキシコに比べ何もないとか、今から見ると意外な記述もちらほら。 

バロックミーツジャズ


ヴェネツィアで作曲家トリオに会ってから華やかさ急展開。たぶんカルペンティエール作品中一番陽気な作品ではなかろうか。
ヴィヴァルディ指揮ピエタ修道女楽団のバックのもと、ヘンデルのオルガン、スカルラッティのチェンバロによる即興が始まる。と、メキシコ鉱山主の従者の黒人が棒など叩き始めジャズのリズムを加える。スカルラッティが「こいつはリズムを押し付けてくる」と叫ぶと、従者は「これはジャム・セッションというものだ」とやり返す。

朝になり墓場の近くで朝食?その墓場にはストラヴィンスキーのものがあり、ヘンデルがヴィヴァルディに「この男はヴィヴァルディは400もの同じようなコンチェルトを書いた、と言っていた」とからかえば、ヴィヴァルディは「俺たちは昔の音楽なんて顧みなかったから一番モダンなんだよ」と言う。そういう点ではジャズと共通するのか。とそこに「ドイツ人作曲家」の柩が流れてくる。これはワーグナーなのか。 
確かにストラヴィンスキーもワーグナーもヴェネツィアで亡くなった…んだっけ?とにかくなんだか作品空間では、時間が逆に流れているような… 

この作品、かなり楽しいけど、80ページくらいでもう半分過ぎた… 
(2017 09/07)

モーリが鐘を鳴らす時…


「バロック協奏曲」をさっき読み終えた。 

 物を間近に見るためには、その物から遠ざかることが、海を隔てることが、時には必要らしい。 
(p111) 


カルペンティエールを通底する、距離の図式がここでも。
作品中で取り上げられているヴィヴァルディのオペラ「モテズーマ」はドイツグラモフォンから出ていて、少し試聴してみた。 ヴィヴァルディらしい颯爽とした作品だった。
モーリ(黒人)が鐘を鳴らすと一日が終わり、作品中の時間の混線状況が加速してゆく…

そういえば、コルテスのアステカ征服とバロック時代のその評価というこの本の読みどころは、表層の内容が楽し過ぎて、今回はほとんど踏み込めなかった、自分は。
(2017 09/08)
(2017    11/12  編集)

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