見出し画像

半分のこわい話

病院って「人間」が見える。良くも悪くも。

あ、ホラー要素ゼロなので安心して読んでください。大丈夫。

こんなに病院に通うというか、病院で過ごすなんて思ってもなかった人生だった。

病院は疾患を治療する場所だけど、同時にふだんは見えてない人間のいろんな部分が晒されるんだ。

特に診察だけでなく、通院での治療でほとんど一日中、病院の中で過ごす時間が多いと余計にそう思う。

僕が通ってるがんの治療センターは、特別な資格(がん化学療法認定看護師さんだとか)を持った人を含めたスタッフで固定されてる。暴露対策とか、患者だけでなくスタッフもちゃんとした知識、スキル、経験がないとリスクの高い仕事なのだ。

それだけに、長く通院してると他愛ない会話もするし、ときには家族や自分の深刻な話もするようになる。

まあ、ヤギの僕は通常運転なので草を食むように聞いてる(というか聞こえてくる)だけなのだけど。

中には自宅で夜中でもちょっとしたケアというか、誰かが近くにいて何かあったときの対処をしないといけない患者さんもいる。

看護師さんも、そこは当然把握しないといけないので家族構成とか家の中の様子なんかも聞いてくる。

家の間取りだとかどこで寝てるかとか、わりとプライベートな部分も含めて。もちろん仕事上必要だから答える。

僕の場合は簡潔に答えるだけだけど、中にはそこから話が盛り上がって家族間のあんなことそんなことも「そうなのよー」みたいな感じで話す人もいる。

人生いろいろ。

まあ、あれなのでぼかして書くけど、夫婦の寝室は同じか別かみたいな話とか盛り上がってる。

別にそんなゲスな話じゃなく、夜中に何かあったときに対処できる誰かが近くにいるかってこと。

ある年輩看護師さん(定年を超えて、それでも頼まれて勤務してるらしい)も夫さんが重い病気を患ってる。

後輩看護師が年輩看護師さんに「夜中とかどうしてるの?」と聞いたら「同じ部屋で寝てるよ」という。

「だったら安心ですよね。愛あるじゃないですか~」と返すと年輩看護師さんは笑いながら首を振って言う。

「そんなんじゃないわよ。愛なんてとっくに無くなってるから」

「じゃあどうして?」
「もうね、人類愛」

スケールがすごい。そうかそうなるのか。

「だってそうじゃない。わたし看護師なのに、もし知らないとこで何かあったら何やってるの? ってことなるでしょ? それは嫌だからもう仕事と同じよ」

という話をわざわざ僕に話してくれた看護師さんがいた。リアクションに困るな。

まあけど、なんとなくわかる。

半分冗談まじりで半分本当の話ほど、人間のリアルというか真実が顔を覗かせるのかもしれない。


===
「がんを自分らしく生きる」を綺麗ごとにしたくない人のためのマガジン出してます。