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新材料としての炭素繊維


可動機器の材料としては古くから木材が用いられてきた。木材は主に炭素と酸素と水素からなり、水にも浮く軽量性があるにもかかわらず、堅くて勁い材料である。

しかし、大型の資源は限られた量となっていることに加え、木炭は鉄の生産の燃料および原料となっていたことから木材を取り尽くしてしまったのが産業革命期である。大航海時代末期、材料不足から船舶の製造において材料の鉄への変更が行われた。それが鉄の生産を促進した。燃料は石炭が用いられるようになったが、鉄鉱石の還元剤としては石炭由来のコークス(炭素)は硫黄の混入が材質の劣化を生み、木炭コークスの置き換えが進まなかった。木材の深刻な枯渇により石炭コークスを用いた精錬が開発され、鉄の生産が増大していった。


船舶では鉄での代替ができたが、航空機では軽量性の観点から木材と布が初期の材料であった(ボーイングは材木商だったという)。軽量性が重視されたため、1960年代から、木材の余分な成分である酸素と水素を徹底的に取り除いたほとんど炭素元素のみからなる炭素繊維が登場した。炭素繊維は軽くて強い。航空機の主翼の面積は変えずに揚力を稼ぎ、長く、細くしたことで燃費を大きく改善した。

ボーイング787の主翼

こうした軽さと強さは風車の世界も変えている。風車も最初は木製だった。風車による発電性能に重要なのは、翼が回転する断面積である。そこで、翼はどんどん長くなり、2000年に40mほどだった翼が今では100mを超えるものも出てきている。長ければ長いほど撓んで支柱に当たってしまう。重いと支柱をぶっとくしなければならない。炭素繊維が救世主となって風車の大型化を支えている。

日本の風車は小型

新素材が世界を変えていく。木材が枯渇して金属に置き換わった材料が、木材から余分な成分を除いた炭素材料による時代が来ている。グラフェンやカーボンナノチューブに代表される炭素材料は軽くて強い。今後、さまざまな観点から炭素繊維を紹介する。

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