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欧文(英語)での結婚招待状の組み方

招待状というのは賞状類(ディプロマ)と並んでタイポグラフィの中でも結構気を使うもので、調べるとあれこれマナーが出てきますが、それは欧文でも同じなようです。今では結婚も多種多様なスタイルがあって、そこまで堅苦しく考えることもないようですが、一応基本を紹介したいと思います。


基本スタイル

ここで挙げるのは、アメリカの最も伝統的でスタンダードな例です。つまり「夫婦同姓ストレートの両親が健在で、その元で育ったストレートの男女が結婚する場合」です。片親の場合や祖父母などに育てられた、親や自身が同性カップルだとかは取り敢えず考慮しません。

”Wedding Invitations" より引用

Host line

ホスト、つまりこの式の主催者を書く行で、通常花嫁の両親名義となります。ここでは「ジョン・グラフ夫妻」となっています。古くは「父親が娘を花婿にあげる」という形だったからこうなっているようです。ここが新郎新婦名義になる日本と一番違うところだと思います。妻の名前が省かれていますが、これが通常らしいです。現在の感覚だと怒られそうです(笑)。

もちろん現在は様々なケースがあり、本人たち名義だとホストライン自体を省いてリクエストラインから初め、

The honour of your presence
is requested at the marriage of
(Bride and Groom line 以下が続く)

としたりするようです。

Request line

「ご臨席を賜りますよう」的な決まり文句が書かれています。honor は英国式に honour と綴ります。この辺はちょっと気取っています。

Event line

「何のイベント」かを説明する行で、「我々の娘が結婚します」となっています。our ではなく their となっているのは、多分古風な言い回しなのだと思われます。

Bride and Groom lines

花嫁と花婿の名前が書かれていますが、花嫁は名字が省かれています。Event line から続けて訳すと、

我々の娘であるジュリー・キャスリンが、ドクター・ルイス・プルザック・ジュニアとジュディス・プルザック夫人の息子スティーブン・ジェームズ・プルザックの元へ嫁ぎます

となります。敬称はちゃんとしなくてはならず、博士号を持っている方には Dr. を使いますし、(あまりないパターンですが)貴族や大使など特殊な身分の人はそれぞれに敬称がありますので、間違いがないよう注意します。花婿の母親がフルネームで書かれてますが、これはやはり花嫁側の両親が気を遣ってそうするのでしょう。

Date and Year lines

挙式日を記載します。ここでは数字は使わず気取って(笑)スペルアウトします。「2003年11月29日土曜日」をスペルアウトするとこうなります。

Time line

時間ですが、こちらもやはり数字は使いません。2時なら本来 afternoon とかいらないですが(午前なワケがない)、付ける場合は AM/PM とか使わずにちゃんと in the morning / afternoon とします。

Location line

挙式場所です。「ペンシルベニア州ウェストチェスター 聖ペテロ・パウロ教会にて」となっています。住所が日本とは書き順が逆になり、場所→市名→州名で書かれています。

Mr./Mrs. や Dr.、Jr. など例外はありますが、全体的にとにかく略さず丁寧に、というのが基本です(ちなみに英国では Mr/Mrs とピリオドを付けないのが普通なようです)。数字をスペルアウトするのは結構めんどくさく、しかも読みづらいという誰得な感じなのですが(笑)、クラシックな感じを出したい時には必須でしょう。ただ、以下の参考文献にある作例を見ると、普通に数字を使ったものも見られます。カジュアルなスタイルならばそれの方が似合うでしょう。

招待状に含まれるもの

"Wedding Invitations" より

ちゃんと一式揃えるとこうなるようです。結構大変です。

Outer Envelope
一番外側の封筒。これに以下のものをすべて入れ、宛名を書きます
Inner Envelope
内側の封筒。これに招待状本体を入れます
Tissue
招待状のカバー。高級感の演出(笑)
Invitation
結婚式招待状本体
Reception Card
披露宴についての案内(結婚式は Ceremony) 
Reply Card and Envelope
出欠の返信用カードと封筒

以下ちょっと拡大します。

Reception Card

「式が終わりましたらそのままその後ザ・カーライル(会場名)にて披露宴を行います」と書かれています。

Reply Card

フラップに隠れているので勝手に補っています。1行目は「○月○日までにご返信願います」となります。2行目の M_______ ですが、ここに返信する人が Mr./Mrs. から名前を手書きします。「ここに書いてね」と促すように M だけ入ってます。

最後の will ________ attend は、このアンダーラインの上に出席する場合は「be」、欠席の場合は「not」と書き入れます。丁寧な人は be の場合、attend に ing を追加するかもです(その方が文法的に正しい)。

この他、昔は場所の詳細を記した自作の地図などを同封してたようですが、現在はカーナビや地図アプリなどがあるので不要なようです。もちろん作っても構いませんが。

Save the Date

招待状とは別に、Save the Date というカードを事前に送ることがあります。「この日(式当日)は空けといてね!」というメッセージだけを書いて送り、後日改めて招待状を送ります。特に決まったフォーマットはないようで、Pinterest などで検索するとたくさん出てきます。

参考文献

この note のほとんどはこの本から引用しています(笑)。著者の Jenifer Cegielski 氏の Instagram はこちら

著者の Julie Holcomb 氏は招待状の制作も請け負っているようです。サイトは以下。


Header Image: Fiona Murray by Unsplash

カフェラテおごってください。