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5%の優しさ

「キミが嫌いなものって
意外と多い?」

とキミが訊く


「意外とだったら多いかもね」

私は、そう答える


「八方美人?」

そう訊いたキミに


「人間関係で
波風立たせないためにね」

と私は返す

「ストレスは?」


珍しく多弁なキミの質問に
驚きつつ


「溜まるわけないじゃん
だって
多くて95%くらいだもん
100%本気だったら
ボロボロになってる」


自分なりの言葉で
キミに切り返す

キミはまた
何か考えている


私のように
喜怒哀楽を
演じるのが苦手なキミは
多分、ほどほどを知らない


「傷ついてる?
傷ついてた?」


丁寧に正確な
言葉を紡ぐキミが
更に質問をする


「傷ついてるかもしれないけど
無意識内の感覚だと思うから

傷ついてたのを知ってるから
意識しないようにしてる」

「そっか」

納得したかのようなキミが
はにかんでるような笑顔を見せた


「うん」」


そう言いいつつ
今日はいい日になったなと思っていた
キミのその一瞬だけしか見せない表情を
垣間見ることができたから


キミのそんな些細な変化を
見るだけで幸せになれる
そういう人だっているんだから
あんまり難しく考えないで


なんでも100%でいたら
120%の力を出したい時も
出せなくなるから

キミのマイナス5%は
分からないけれど


もしもキミが95%でいるのが
難しいなら

5%の優しさは
全部私にくれたらいいのに


そしたらキミにはその倍以上で
返してあげる


「お腹空いた」


キミがお腹を押さえる

その言葉に返事をする代わりに
私は105%の笑顔を見せる

「何か、可笑しい?」


「別にー」


込み上げる笑いの正体は
すべてキミなのに
当人のキミは分かってないこと
可笑しいのだけれど


そんな言葉を口にするのも
苦しいくらい
キミと話せる今は
胸がいっぱいなんだよ



空腹なんて翳んじゃうくらいに



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