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読書note

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記事一覧

子どもたちは夜と遊ぶ(上・下)/辻村深月

ミステリーは先を急いでしまう。こんな長編はとくに。

いやあ長かった。目的のない殺人はしんどいな。終わらせたくて、あえて読み流してしまった。ミステリー大好き人間ではないので、二重人格だなんて全然思わなかったし、それがミステリーの常套手段だということも知らなかったけど、それって明らかにずるいし単純にオチとして物足りなさを感じると思いませんかっ(突然の語りかけ)。構成とか世界観とか好きだっただけに残念

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小夜しぐれ/高田郁

みをつくし料理帖シリーズ第5弾。種市の過去と美緒の縁談がせつなすぎてだな。佐兵衛もちら見だし、最後の小松原の話でほんわかさせてもらわなければ、つらすぎたな。小松原目線で語られることでスピンオフ感というかお甘感が増して、おあとがよろしかったです。あと、こんな季節に読んだから、菜の花の苦みが恋しい。それにしても、あんなに贅沢品だったのか。

今朝の春/高田郁

みをつくし料理帖シリーズ第4弾。ここまで読んで確信しました、私りうさんが好き!(いきなりなんだそりゃ)芳とは違う角度から澪を諭してくれる、その湿度の低さが好き。今回は恋路に野江ちゃんに料理対決におりょう夫婦の危機(これちと長過ぎ)にと盛りに盛った感じである意味おなかいっぱいだったんだけど、このりうさんの態度と清右衛門の判断が光っていました。小松原の母の話は、良い話だしやったね澪ちゃん!とは思うけど

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スナックちどり/よしもとばなな

よしもとばななはこういう女の子同士が寄り添って生きる話がいいよなあ。彼女の作品はいつも物語を通して伝えたい部分がわりとはっきりしていて、それは人生でここだけは信じていたい、こうやって生きていたい、みたいなとこで、その点においてだいたい私に「ああそうだよかった間違ってなかった」と思わせてくれる、だから好き。好きというか、助かる。あと、こういう人いるよね(今回であれば主人公の元夫)の描き方がとても生々

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おとうさんといっしょ/川端裕人

子育てする男性が主人公の短編集。著者は記者の経歴を持つそうで、こういう人ってエンタテイメント性のある作品を書くイメージなんだけど、裏切らない内容だった。男でもなければ子どももいない私にとっては、リアリティーをねじこみつつおもしろおかしいストーリーに仕立てたものと思っていたけど、感想などを見るとかなりリアルに感じる人もいるようで。「ギンヤンマ、再配置プロジェクト」の、まさに家族が再構成されていく過程

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けむたい後輩/柚木麻子

ホラーかよ!てのが読了直後の感想で。それくらい真実子が怖かった。煙たいなんて遥かに超えてた。いやー、栞子にも真実子にも美里にも共感できないまま最後の台詞にたどり着いてしまったけど、強いてだれかに同情するなら栞子かなあ。イタいなーと思うけど、「いるいる」感なのか自分の過去との共通点なのか、はたまた真実子的心境…いや、ないな。たぶんラストが可哀想すぎたんだな。「あまからカルテット」と「早稲女、女、男」

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さいはての彼女/原田マハ

旅がテーマの短編集。たぶん、あまり合わなかった。小説なのだから、物語そのものにリアリティーがないのはかまわないのだけど、登場人物、とくに主人公の言動の端々にリアリティーを感じず、なかなか入り込めないまま、何か共有したい大事な部分をすっ飛ばされたような感覚が拭えないまま、短い物語はあっという間に着地してしまったなあ。その予定調和な結末も然り。ほかの作品はどうなんだろう。そして今知ったけど原田宗典の妹

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ポースケ/津村記久子

なぜか迷いもせず借りたくせに読み渋っていて、返却期限に尻叩かれながら読み始め、途中から妙にしっくりときて、最後には、ああ、この作品好きだわ、というところに着地した。二章が始まったときに気付いたのだけどまたも連作形式の物語。意識的にも無意識的にもこういう作品を選ぶことが多いので、いろんな人の人生を覗き見しているようなお得感を感じているのだろうか?とも思ったけど、この小説に関しては結果まったくそこを意

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想い雲/高田郁

というわけで(どんなわけだ)立て続けにシリーズ3弾読了。いつからか小松原が佐々木蔵之介で再生されるようになりました。ほかの登場人物をとくにアテ読みするわけではないし(あ、種市は笹野さんだな)、蔵之介のことが超絶好きとかでもないんだけど、小松原が蔵之介だと思うと自分が澪に組み込まれていくんだよなあ。澪の気持ちに寄り添うというよりは、澪の気持ちに混じり入るという感じ。蔵之介は口は悪いけど優しい浪士風情

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花散らしの雨/高田郁

みをつくし料理帖シリーズ第2弾。数冊借りている文庫のなかでもすっと手が伸びてしまう読みやすさとおもしろさ、安定感。今回もひとつひとつの出来事が人情味と季節感たっぷりに描かれていて満足です。登場人物とともにその出来事に一喜一憂しながら、前作よりずっとシリーズ全体というひとつの大きな物語を感じられる内容。巻頭に地図が入っているのもその一端かな。このたくさんの伏線(まあ別に伏せてないけど)がどんな風に回

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ひなた/吉田修一

吉田修一の小説は肌に合うなあと思うのは母校が同じだからかなあ。一定のリズムで淡々と描かれる凡々とした日々、けれど誰にでもある自分だけの小さなドラマとして拾い上げる要素に、ごく自然に溶け込める感覚がある。登場人物の誰かに共感できるかといったらけっしてそういうわけではないし、「誰にでも秘密がある」(これ、なんのコピーだっけ)みたいな不幸で暗い雰囲気はないものの実際みんなどこか暗い日陰のような部分もある

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ハードボイルド・エッグ/荻原浩

昔、会社を辞めて大阪に帰る先輩が「本ならええやろ」とくれた餞別が「神様からひと言」で。そこから一作くらい読んだかな? すっかり情けないけど憎めない中年男性の奮闘を描く人というイメージになっていて、この作品もそういうテイストだった。うーん。背表紙に書かれている煽りほどのスリルも涙もなく、最終的にいい話なんだけど、ちょっと、長かったかなあ。ハードボイルド小説ってこういう感じなのかな? ふふ、と笑いたく

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三人暮らし/群ようこ

一人暮らしの長い女なら一度はルームシェアくらいしてみたいと思っているような気がする。一人に飽きて、けれど結婚や同棲の予定もなくて、何かしらの変化がほしくて。本を読みながら、自分もこのなかの一員だったらな〜と少しだけ思って、それだけでもとても楽しかった。まあこの本の三人暮らしは、嫌々とか成り行きとかのものもあったんだけど。それもまた一興。どのお話も気軽に読めて、くすりと笑えて、ちょっとふやけた気持ち

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きのうの神様/西川美和

脚本家の書く小説。読む前はそんな風に思わなかったけれど、読み始めると描写がそのまま映像化され入ってくるシーンがいくつもあった。その一方でもう自分の書き方が確立している人の文章というか、読ませる気概があるというか。読む物語としてきちんと届きました。田舎独特の閉鎖的な空気感も淡々と、でも生々しく表現されていたなあ。ただ、どういう気持ちになればよかったのかな?と読後感は微妙。あとがきで僻地医療を取り上げ

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