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153 花とパンの朝

外が淡く明るくなったころ。
パン屋さんの開店時間に合わせて家を出ました。

私は、この時間に外を歩くのが大好きです。
すこしグレイがかった一日の始まりの青空。土から香る湿った香ばしい匂い。やや霞んだ風景に朝日が透ける空気の美しさ。
誰もいない穏やかな静けさ。

地球を独り占めしているみたい。
早起きの特権です。

パン屋さんは、川を渡ってしばらく歩いたところにあるので、川に沿って歩きます。夜は隠れて休んでいた鳥たちが、もう水上でおしゃべりしています。

ふと見渡すと、ついこの前まで無表情だった木々に淡い桃色のベールがかかっています。

あ。
いつの間にか、桜がたくさんのつぼみを抱えています。
7割くらいの花が開いています。ゆらゆらと風になびいて、木をふんわりと彩っています。
少し前まで、木蓮のやさしさに励まされていたのに。

またこの季節がやってきました。
開花時期はとてもとても短いのに、その華やかさが強烈な印象を残す桜。

私は、桜を見るとどきどきしてしまいます。
それは美しすぎるからか、雨や風ですぐに散ってしまう脆さのせいかわかりません。梶井基次郎の作品のせいかもしれません。

でも、どきどきしながらも空気ごと桜色にしてしまうこの花から目が離せないのです。
気がついたら咲いてあっという間に散ってしまう桜は、時間の尊さを思い出させてくれます。

桜の魔法で、予定よりものろのろとパン屋さんに着いたら、すでに人がたくさんいました。
焼きたてのパンの前では、みんな早起きなどなんでもないのでしょう。
そう思うと微笑ましくて、パンのしあわせな香りとともに胸がいっぱいになりました。

生きているのがちょっと好きになる瞬間です。


夕方にはほとんどのパンが売り切れてしまうお店なので、朝の品揃えの多さにわくわくしながら吟味します。ハニーチーズパン、クランベリーデニッシュ、いちじくとクリームチーズのパン、きのこのグラタンパン…。

胃袋が一つじゃ足りない…と思いながら四つ(!)選んで購入しました。

帰りの川沿いの道で、桜の木の近くにあるベンチに腰かけてクリームパンをほおばりました。ふわふわでしっかり甘くて、春風のさわやかさとよく合います。

このたくさんのつぼみたちも、風に吹かれて順番に花開いていくのでしょう。

ふと目線を下げたら、足下にも小さなお花がたくさん咲いていました。
まるくて黄色いお花がてんとんてん。
その間に愛らしい薄紫の小さなお花もちょこちょこちょこ。

木々にピンク色のベールがかかったように、地面にも色とりどりのベールがかかっていたのでした。

桜の華やかさも、足下の小さな草花のかわいらしさも、どちらも特別な美しさを持っています。そして、規模が違っていても、いつか花はひらきます。春は希望を教えてくれると気付きました。

こんな身近なところでも、季節の巡り、自然美しさを感じられます。
そのことに改めてうれしくなった小さな朝のことでした。


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今回のイラストと食いしんぼうのおしゃべり

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食欲の春満開のイラストになりました。
描いている期間はとにかくお腹が空いちゃうので、パン屋さんに足を運ぶ回数が多めでした(笑)

*いちごサンド:実は食べたことがない…!のです。憧れのパン。
*フルーツデニッシュ:某パン屋さんでいちばん好きなパン。さくさくのデニッシュ生地がたまりません。
*ミニフランスとロールパン:シンプルな定番。フランスパンはたらこバターにするのが好きです。
*メロンパン:青春を思い出しますね…。あの頃は、コンビニで売っている100円のメロンパンがエネルギーでした。
*チーズパン:チーズ愛好家としては、はずせないパン。
*クリームパン:ときどき無性に食べたくなる甘党パン。
*コーンマヨパン:最近はホットケーキミックスを使って簡単に作れるレシピがあるそうです。今度絶対作ろう(大量に!笑)。
*カレーパン:カレーを作るだけでもひと仕事なのに、それをパンにして揚げるとは…。自分ではまず作らない(作れない)ので、たまに買います。
*ソーセージドッグ:これはご褒美がっつりランチ用のパンですね。立派なソーセージが入っていると目もお腹も大満足です。
*塩バターパン:これも実は食べたことありません…。流行ったころに「流行りになんてのらないもんね」と謎の意地をはって食べませんでした。が、母がいつも「これおいしいのよ〜」と言ってくるので、そろそろ食べようかなと思っています。意地は損損!

パン好きなので、今回の記事はいつも以上に気合いが入っちゃいましたね。

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