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Vol.5 すきなところ/ よだれの宝石

息子 0歳4か月19日、生後141日。

最近とにかく寂しい。1日の終わりが近づくと、今日の息子にはもう2度と会えないことが寂しくて胸が苦しくなる。子の成長を素直に喜べない私は母としてまだまだアマチュアなんだろうが、アマチュアで結構。息子の前で毎晩堂々と「もうこれ以上大きくならないで!」と無理なお願いをしている。

授乳中に漏れる柔らかい声、私の指を握りしめる小さな手、斜め下45度からの上目遣い。寝起きの不機嫌そうな顔、眉根に寄った皺。鏡に映る自分を見て恥ずかしそうにそっぽを向く瞬間。遠くから私の姿を捉えてくしゃっと見せる笑顔。寝ハゲ。おしゃぶりを近づけるとちゅぱちゅぱする口。寝入っていくときのお経のような唸り声。私の胸に顔をうずめる仕草。輪郭からはみ出た頬、俯くと現れる短い睫毛、富士山型の唇。寝かせたときの切れ長な目と座らせたときのまん丸な目。絵本に興奮してジタバタする手足。むちむちのあんよ、大地を知らない柔らかな足の裏。泣きながら笑ってるかお。

息子のすきなところ。まだまだ書ききれない。そんなの、存在自体がだいすきでたまらないのだから、列挙する必要なんてないのだけれど。

でも、どうか、どうか、できるだけリアルに。寸分の違いもなく。

数年後もこの情景が目に浮かびますように。

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なかでもとりわけ息子のよだれが好き。
夫がよだれを垂らして寝ていると、汚い!と分かりやすく嫌な顔をしてしまうのに、息子のよだれは芸術品のようにずっと見ていられるし、手首をなめなめされている時間は顔が緩んでしまうし。よだれの海に溺れたい。

口元から雫の形をしてたらぁっと下に垂れていくその液体は、純度100%で宝石みたいにキラキラしている。自然光の力を借りなくても、蛍光灯の真下でも、キラキラしている。よだれかけなんかしている場合ではない。彼のよだれ全てをキャッチして瓶に詰めるか凍結させて永久保存しておきたい。。。

言葉にするとなんだかきもちわるいけど、母親とは、そういう生き物なのです。

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