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山山

 白馬でスキーをしてきました。チビ子5歳、初スキーです。
(私達が帰った次の日に白馬のスキーリフトが倒木事故で、10人ほどの人を乗せたまま一時間以上止まってしまったそうでした。リフトの上で一時間なんて…寒かっただろうな、みんなが今は温かいところで元気でいますように!)

 スキーに行くって、行きは9時間、帰りは8時間も車でかかって大変だった。(私は乗ってただけだけど!)寒いし足は重いし、手袋ゴーグル帽子ストック部屋の鍵をいつも誰かが落とすし、万能ベストを着てスマホや現金をがっちり身につけてたのもうんざりしたし、自分のペースで朝コーヒーも飲めない。だけど。なんで雪山はあんなに素敵なんだろうと思わずにいられないです。

 真っ白で。山の中では人は皆小さくて、飛ぶように早く滑れるのに、ミノムシみたいにおそくしか歩けなくなる。熱い息でゴーグルが曇る。ちょっと外に出てしまった耳はちぎれるように冷たい。滑るのは危なくて早くて、何かあったらあっという間に離れ離れ。一緒にいる人にくっついて頼っていたくても、または助けたいと思っていても、ひとりで山を降るしかない。
それが、なんなんだろう?切ないのか、胸が熱いのか。

広ーい真っ白なスキー場にだーれもいない時がある。私しか滑ってないことに気づく事がフッとあったのです。じゃあ、どこに向かって滑ってもいいんだ、どこでも行けるんだ、あっちも行ってみたい、こっち向きに進んでみたい。と目がランランしてきちゃってきて、私こんな人だったの?と可笑しく思う。
行こう!とか、大丈夫!とか、ヤダ。とか、勝手に自分が自分に大きな声で声がけを始めちゃうのもスキーの時の面白い現象。

そして無事につくと、ふう、って。初心者コースはいかにも安全そうに見えて、これしきのことで大げさだったな。って照れるけど、だけど一瞬で死んじゃうかもわかんないって言うほうが本当だから。スキーに体が慣れてきた頃、ゲレンデの友達もできる。名前も知らない、親切にリフトを譲ってくれた海外の男の人達。ちょっとしか見えてない顔がうんと優しくて広い国から来たんだなって思う。一瞬の良い交流が本当に良いっていうのも雪山だ。

 チビコはヒモをつけて、そのヒモをパパに持ってもらってぐんぐん滑っていた。ペンギンそっくりのウェアすがたで。パパがグングン勢いをころしながらチビコに激突しないようについて行ってお見事。
 そのパパくんは崖みたいなとこを滑るのが好きだ。だから、チビが飽きて部屋に帰ると言えばひとりでそういうコースに飛んで行く。スピード出したい滑りたい滑りたい滑りたい、という彼のお腹の声がうるさい位で、無理にいてもらってもろくなことにならなそうだ。『おう、雪山来れて良かったな、思う存分いってこい!気を付けてな!』って思う。その感じも好きだ。まあ、火がついた夫くんはたいてい調子に乗りすぎて私はキレることになるが。

車とペンションで子供のお菓子を食べすぎたせいで、帰宅後も数日胃がおかしかった。スキーウェア姿がソフィアローレンみたいにゴージャスだった友達に、チビコがしつこく寸劇をしかけてて楽しかった時も、夕方の食事の前も、長い長い車移動中も、いつだってお菓子まみれだった。和室の床の間に置かれた大量のポテチとグミとかいけつゾロリの本達の残像がまだ見える。。

 コーヒーを自分のペースでおかわりさせてもらえなかった事が私にとってよっぽどの不平不満だったらしくて、ゆり戻りで毎日5杯くらいコーヒーを飲むようになってしまった、胃が変なのはこのせいもあるかも!だけどまだまだやめれないよお。ああコーヒーを好きなだけ飲める、飲めるんだあ〜!と幸せ噛み締めて、いまもぐびぐび味わっている。