パワハラはなぜ職場で起こるのか

 今日、2022年4月1日は法関連の改正が目白押しです。
 育児介護休業法の改正(主には男性の参画促進)、個人情報保護法の改正(一部厳罰化等)、パワハラ防止法の施行(大企業は施行済)などがあります。
 改正・施行されたことを表面上知っているだけよりは、中身の把握ができていた方が身のためですし、企業が法改正に対応していなければ、後から責任を問われてしまう危険がいっぱいです。
 今回は、全ての企業に義務化されたパワハラ防止措置について書いていきます。

◇パワハラは労務問題です

 パワハラはじめ職場のハラスメントは、労務問題として扱われます。就業規則等に規律が定められているはずですが、就職の際、雇い入れ時に確認されましたでしょうか。また、雇う側の方々は、問題が起きたときにどう対応すべきか、何が出来ていないと取締役の責任を問われることになってしまうのか、自信を持って答えられる状態でしょうか?法律の改正ごとに、企業風土にあった内容で規律と体制を更新し、周知していく必要があります。社会人歴の長い先輩方は、時代の変化を歓迎しつつもどこかで「昔は当たり前だった」「ダメなことかもしれないけど、今となっては自分のためになったと思っている」など、もしかしたらまだ立ち位置が微妙な部分があるかもしれません。しかし私は、それらが「今となってはいい思い出だ」と本心で言えるかどうかが分かれ目ではないかと考えます。本当にパワハラやセクハラを受けて悩み闘った人の記憶はいつも、泥を飲むような息苦しさと共に思い出され、心や身体のどこかがひんやりとするものです。そんな思いは、誰もしなくていいはずだと思いませんか。

◇パワハラはなぜ職場で起こるのか

 会社というのは組織である以上、管理者がいて、指示系統があり、多かれ少なかれ上下のパワー関係のもとに統制されて成り立っています。したがって、その関係性の中で管理・指導しなければいけないこと、またそれに従うべき立場や事柄が発生します。職場では「言うことを聞かせないといけない」「許可を取らないといけない」、そんな場面が日常茶飯時のため、強制された感じが強いと「これはパワハラなのか?」と、もやもやするような問題がどうしても起きやすい環境なのです。その点でセクハラに関しては、仕事場にセクシャルは不必要なケースがほとんどなので、パワハラよりも分かりやすいと言えます。

◇相手がパワハラだと思えばパワハラなのか

 子どものいじめには「悪気がなくても、相手が嫌がっていたらダメだよ」という注意・指導がありがちですが、大人の職場でも相手がパワハラだと思えばパワハラなのでしょうか?これは、実はそうではありません。厚生労働省のガイドラインに6つの類型が示されていますが、その判断には客観性が必要で、状況が明らかである必要があります。また、パワハラが上司・先輩から部下・後輩への一方向のものを指すかと言えば、これも違います。部下・後輩がその立場を利用するなどしていやがらせをするような客観的事実が有れば、それもれっきとしたパワハラです。(こういった法関連のものを正しく知るには、誰かのブログなどではなく、国の機関が発信しているものを見たほうがよいです。長文で堅苦しい詳細なもの以外にも、下に添付したようなマンガやイラストでの発信も多く工夫されています)。

◇見て見ぬ振りは許されるか

 この4月1日以降、中小も含む全ての企業がパワハラ防止措置や相談対応をするよう義務づけられたため、企業側は見て見ぬふりで何もしないわけにはいかなくなりました。まずは相談窓口をしっかり設けて社内周知することが重要です。もし被害者から相談されたにもかかわらず会社側が適切に対応しなかった場合、仮にパワハラ行為自体がそこまででなくても対応のお粗末さで被害者の苦痛の評価が大きくなり、退職後なども含めて訴えられた場合には立場が大変苦しくなります。責任の追求は代表取締役にも及ぶようになりました。もちろん代取がパワハラ行為に及ぶのは、もってのほかです。

◇雇われる側も正しい知識を

 パワハラ行為は上司・先輩(上位者)から部下・後輩に向けたものばかりでないと先述しましたが、とはいえ一般的には会社が組織という管理体制を持つ以上、上から下に発生しやすいのが現状です。「強い口調で注意された。精神的な攻撃(パワハラ)だ」というのはもっともらしいですが、たとえば部下の行動が、周囲の人に危険を及ぼすような軽率なものだったために、咄嗟に強い口調で制止したというのであれば、どちらかというと問題は部下の想像力や意識の欠如にあると取れるでしょう。一方で、経験値の違う上司と部下では危険度の認識が異なる場合がありますから、上司はその辺りの説明をしっかりと行い、部下が「自分は言われすぎている」と感じないで済むようなケアをするべきです。
「服装をいちいち注意される。個の侵害(パワハラ)だ」というのもありそうですが、これについても、職場環境や職種に於いて会社のイメージや信用を十分に落とすような行為であれば、注意があって当然です(注意の仕方には注意が必要)。加えて、就業規則内に服装の基準や規律があった場合、規律違反で労働者側が責められても仕方ないと考えられることもあります。

 一日のうち、仕事をしている時間は相当な割合を占めます。そこで関わる人たちと、出来るだけ気持ちよく納得しながらコミュニケーションができるよう、気持ちの整理のよりどころとしてパワハラ防止法の理解を深めておきましょう。

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