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販売員がお客様にモノを伝える時に気をつけるべきこと

販売員の皆さま、販売員の仕事に興味がある皆さま、こんにちは。

販売員は、お客様になんとか商品の良さに気づき理解していただこうと、色々な切り口でモノを伝えようとします。

たとえば、「日本に数台しかないシャトル織機でゆっくり織られて」とか、「職人がひとつひとつ手作業で編んで」とか、そういった誰かの時間や手間が掛かっていることが商品の付加価値になり他者と差別化できるきっかけになると思っている販売員さんは少なくありません。

そしてこういうフレーズを「へぇ〜」と感心する様子で聞いてくださるお客様がある程度いらっしゃるのも事実ですから、商品資料にそういうフレーズを見かけると「あ、コレ接客に使えるぞ」なんて思う方もいらっしゃるだろうと思います。

資料に書かれていることなら、それをお客様に伝える分にはなんら問題がないと思うのですが、問題は〈自分でイメージができているか〉と〈だから〇〇です、まで言えるか〉という点です。

もの語りが作り話になるとき

販売員は職業柄しゃべりがうまいもの。
さっき聞いたばかりの誰かの話も、ずっと前から知っていたように話せる(話せてしまう、話してしまう)人も多いです。お客様がそそられる部分を探り当てて話し、興味をひくのも上手。

取り扱っている商品について、伝聞の形で「〜らしいです。」と言うより、「〜なんです。」と言い切った方が説得力も増すし、聞いたことをそのまましゃべる分には仕事上の話し方としてダメではないと思います。

しかし、その〈自分の五感で得たわけではない情報〉を言い切ることに違和感を覚えなくなるのは危険です。今自分がお客様に話していることは自分の五感で得たことなのか?と時々自問自答してみていただきたいと思います。

ここが麻痺すると、誰かの受け売りに自分なりのアレンジを加え始めるようになります。頭で想像したり、どこかで聞いたそれっぽい話と結びつけたりして、お客様に分かりやすく、見たことも嗅いだこともないものを話し始めるように。

これはちょっと恐ろしいことです。


シャトル織機はゆっくりなのか

とはいえ、イタリア製の商品の生産の様子はイタリアまで見に行くように、ということではありません。(もちろん、見に行けるに越したことはありませんが。)

書物や資料で現場の画像を見たとか、バイヤーから直接詳しく話を聞いたとか、工場のYouTubeで観たとかでもいいのですが、自分がしゃべっている内容の説明が自分の言葉でつくようにしてからお客様に伝えて欲しいのです。話していることの拠り所を自分の中に持てるようにしないと、想像でそれっぽく話す羽目になって、無意識に誤認を伝達することになりかねません。つい盛りすぎたりとか。

たとえば「シャトル織機」で織られた生地の説明には「ゆっくり織られて」というフレーズがつきものです。この「ゆっくり」ですが、何と比べてどのくらいの速さを言っているか?そこを説明できないとしたら、危ういです。シャトルの音が「カシャン、、カシャン、…」こんなスピードだと思ったら間違いです。でも、「ゆっくり」の字面への先入観でそのくらいのスピードだと思う人がいるから、ときに強調されて「ゆっくりゆっくり丁寧に織られた生地でやわらかく…」なんていう表現で伝えられることがあります。たしかに超高速織機に比べたらゆっくりだし、超高速織機のテンションには耐えられないデリケートな糸でも織れるからやわらかい生地ができますし、やわらかさには色々な理由と側面がありますが、少なくともガッチャンガッチャンと騒々しく結構なスピードです。

「職人がひとつひとつ丁寧に」もそうです。「職人」が「丁寧」に作ったかもしれないけど、「ひとつひとつ」はどうかな、と聞いていて読んでいて疑問に思うことはありませんか?2個いっぺんにやっているかもしれないし、10個くらい一気に出来上がってるかもしれない。“言葉のあや”だと言われたらそうですが、そこを調べてみよう、確認してみようとする人とそうでない人のしゃべりには、明らかに違いが出てきます。


調べてみると分かること

誰かの受け売りの転用に麻痺した販売員さんは、素直なのかもしれません。疑わず、相手の言うことを丸々コピーしてさらには少々脚色し、自分のものにしてしまう。そこに悪気は無くて、またひとつ知識をゲットしたくらいのポジティブな気持ちだろうと思います。

私は天邪鬼なので、いちいち調べてしまいます。特に出版されていない情報に関しては裏を取らないと気が済みません。メディアもWebの時代ですが、ご存知の通りその質は玉石混交です。コピペそのままでなくてもコピペダッシュを繰り返したみたいな情報がたくさん転がっています。そんなものに(失礼、)騙されてお客様を騙すことになりたくないではありませんか。その点、専門分野の出版書籍というのは編集と校正がしっかり入って、ある程度信用がおけると思っています。

調べてみると分かることもあって、詳細な情報はもちろんですが、それ以上にたいてい色々なケースが出てきます。どうだとこうで、こうなってくるとこう、といった具合です。誰かがほんの一面を捉えて耳触りよく表現したフレーズは決してその素材やアイテムの全てを網羅していないし、逆にマイナーなケースなことだってあります。または、特別そうな表現をしているけど、実は“みんなそう”だったり、その手法と商品特長とはあまり関係なかったり。

自分の目や耳、鼻、肌の感覚で情報に近づいてみると、不用意に話を盛ることもないし、強調する部分が変わってきます。そして何より、しゃべりやすい。伝聞の域を出ないなら「〜らしいです」で十分ではありませんか。逆に知識があって言い切れるところも引き立ちますし、自信を持って話せるので会話に良い隙ができます。誰かの受け売りでしゃべる販売員さんは、突っ込まれると答えられることがないのでその部分だけ少し早口になり隙がなく、目はやや逸らし気味です。明るい様子でも、そこだけプラスチックケースに入ったような硬質なトークになるときがあって、それが見分けのポイントです。

というわけで、今日も自分の言葉でしゃべれるように頑張りましょう!

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