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UXデザインをこれから始めたい方へ。UXデザインって何なのか整理してみた

こんにちは。ファンタラクティブ株式会社デザイナーのささきです。

弊社では、ウェブアプリケーション向けのフロントエンド開発を中心としたシステム開発案件や、UIデザイン案件を請け負っています。
開発の中で発見したこと、得た知見を広くお伝えしていきたい!ということで、noteにて発信を行っていくことになりました。

今回は、先日弊社で某人事系ウェブサービスのUXリサーチ〜改善プロジェクト(現在も進行中)を担当させて頂いたことを受けて、「UXデザインって結局なんなのか?」ということをなるべく分かりやすく、噛み砕いてお伝えしていきたいと思います。

特に「サービス運営してるけど、なんでか全然伸びないし、ユーザーが何考えてるかもよく分からないんだよなぁ」という方にとって、ちょっとした解決の糸口になれば良いなぁと思います。

UXデザインって正直全然ピンとこないし、ちょっとなに言ってるかわからない

そもそもこの記事を書こうと思ったのは、今回のプロジェクトを通じて、改めて「UXデザインって、なにを指してるのかすっっっごく分かりづらくない?」と感じたことがきっかけです。
サービス開発に携わっているエンジニアさんや、UIデザイナーでさえ、「UXデザインって、正直ピンと来ないんだよな〜〜」と思っている方もいるんじゃないでしょうか。

元々は自分も、UXデザインってピンと来ないな〜と感じていたUIデザイナーでした。
UX=UIのように使われている場面も度々目にするし、「これぞ良いUXです」と紹介されてる事例もいまいちピンと来ず、「ユーザー中心設計です」なんて言われても、そもそもサービスを開発する中で、ユーザーの体験を第一に考えるなんて当たり前のことのように思えます。

代表者も、事業責任者も、デザイナーも、エンジニアも、マーケターも、サポート担当者も、みんながユーザーの体験が最良のものであるように考えて、動いて、サービスを作るのが当たり前で、サービス開発に関わる誰もがユーザー体験を最良のものにしたい!と思ってサービスを作っているはずです。
そう、当たり前のはずなのですが、実際にその当たり前を実現しようと思うと、これがめちゃくちゃ難しい……。だからみんな苦労するし、時々失敗も起こります。

ユーザーの体験を第一に考えることと、実際にユーザーに価値ある体験が提供できることは全然違う

ちなみに皆さんは、現在や過去に関わっているプロジェクト、あるいは自分自身で過去に利用したサービスや製品の中で、「この機能(もしくはサービスや製品自体)、誰が使うんだろ……」と感じたことはありませんか?私は時々あります。
単に自分がターゲットでないだけのケースももちろんありますが、実際にほとんど使われることなく、消えていくサービスは星の数ほど存在しています。

ではこれらのサービスは、全くユーザーのことを考えていなかったかと言うと、そんなはずはないと思うのです。ユーザーの顔を想像しながら、たくさんの人が使ってくれることを願って開発していたはずです。

自分自身、6年ほど前に友人とユーザー投稿型のサービスを作ってリリースしましたが、最終的に投稿ユーザーが1人しかいないという状況に陥り、ひっそりとサービスを閉じた経験があります……(泣)
この時ももちろんユーザーのことを考えながらサービスを作っていましたが、想像の中のユーザーの思考や行動と、現実のユーザーの思考や行動には乖離があります。現実のユーザーの行動に即したサービスが作れていたかと言うと、そうはなっていませんでした。

『ユーザーの体験を第一に考える』ことと、『実際にユーザーに価値ある体験が提供できる』ことは全くの別物です。
気合を入れて「「「 ユーザーのために! 」」」と念じるだけでユーザーにばっちりハマるサービスが作れればよいのですが、現実にそんなことは起こらないので、実際にユーザーファーストを実現するためにはどうすれば良いのかということを理解し、チーム全体でそれを実践していく必要があります。

ユーザーファーストを阻害するサービス開発の罠

誰もがユーザーファーストなサービス・製品が作りたいと願いながら、どうして失敗してしまうのでしょうか。
以下にあるあるな状況を列挙していきます。

1. チームメンバーそれぞれで微妙に考え方が違うため、議論がまとまらない。個々の持つサービスへの課題間にもばらつきがあり、施策実施の優先度にも理解が得られず、結果としてアウトプットの質が悪い。
目指すゴールはサービスをより良くすることで一致していますが、そのための手段や思考プロセスがチームメンバー内で異なっているというのはありがちです。経営陣、デザイナー、開発陣、運営チーム等、職種ごとに視点が異なってしまうというのもよくあります。
それぞれがそれぞれに、違った根拠と自分の直感や経験則で意見を言います。施策内容は人やその時の状況に左右されたり、単に競合のものを真似しただけのものになることもあります。結果的にサービスのクオリティに悪影響を及ぼします。メンバーの誰かが不満を抱えている可能性も高いです。

2. 技術や機能が、すでにユーザーの求める水準を超えてしまっていて、機能過多・過剰性能に陥っている。最も悪いケースでは、根幹となる機能の良さが新機能で打ち消される。
すでに一定のユーザーを得ているサービス、製品にありがちなケースです。一定のユーザーを得た上で、さらに上を目指すためには何をすれば良いのか……思い悩んだ末に、機能をつけまくるという選択に辿り着きます。


3. サービスを求めているユーザーがほとんどいない。コンセプトレベルで間違っているが、誰も止められない。
技術やアイデアが先行しすぎている場合に起こります。技術は最先端でものすごいけど、ユーザーが実際の生活の中でどう活用するかということが抜けていて、単に技術の実験のようになっていたり、「こんなサービスを提供したい!」という情熱はすごいけど、全然需要がないといったケースです。
少し前だとブロックチェーン関連のプロジェクトは98%が失敗したと言われています。誰かが止めて方向性を変えなければいけませんが、安易に止めようとすると喧嘩になります。


4. 思いつきでアイデアを言うトップに振り回されている。
本当に思いつきかどうかはケースバイケースですが、実際に思いつきに振り回されているとすると辛いものがあります。


5. ユーザーへの理解が深いメンバーが存在しているものの、メンバー内で理解度に差があり、視座が違うため最終的なアウトプットに結びつかない。
ある特定のメンバーと、その他メンバーのユーザー理解に大きく差がある場合です。チームで開発する以上、一人の考えがそのまま全てすんなり受け入れられることは少なく、実際には理解が得られていないことも多々あります。


サービス開発にはさまざまな誘惑がつきまといます。機能をたくさんつけたらより良いサービスになる気がするし、朝起きたらものすごく冴えたアイデアが思いつくこともあります。
さらに、チームで開発する以上考え方は個々に違います。

長いサービス開発の道のりをゴールに向かって迷わず進むには、なにか統一の指針が必要です。指針は誰かがえいっと作るものではなく、チーム全員で同意できるものであるべきです。

UXデザインのプロセスの中には、この指針作りが内包されています。指針はユーザーを主体にチームみんなで共創し、開発は指針に沿って行います。時々指針自体もブラッシュアップしていきます。


結論・UXデザインは、"ユーザーのためのサービス"を単なるスローガンで終わらせず、実際に実践が可能な手法に落とし込んだ一連の方法論

もし、ユーザーの頭の中を覗き込んで、考えていることや、日々の生活様式や、何に価値を感じるかということを全て知れたら、きっと失敗の確率は減らせるし、みんなそこまで苦労しません。

でも、対面でお客さんと接する業種と違い、ウェブサービスではユーザーは画面の向こうにいます。どんな人が、何を思いながら、生活のどんな場面でサービスを使い、何に価値を感じたのか、あるいは感じなかったのか。データから推測することはできても、実際にどうなのか知る由はありません。

・ユーザーがどんな人で
・どんな行動をして
・何を考えていて
・何に価値を感じるのか

ということを、想像ではなく実際のリサーチに基づいて限りなく高い精度で明らかにし(リサーチ+可視化)、それに基づいてアイデアをチーム全体で考え(アイデア発想)、設計(プロトタイプ作成)し、検証(ユーザーテスト)しながら実装(UIデザイン〜エンジニアリング)していく、というのがUXデザインの一連の流れです。

このフローを経て指針を可視化・明文化することで、ユーザーに刺さるサービスを作ることが出来る可能性は上がりますし、さらに前述のサービス開発の罠を避けることで、よりメンバーが気持ちよく、スムーズに、精度の高い開発を行うことができるようになります。

まとめると、UXデザインとは、『ユーザーのためのサービス』を単なるスローガンで終わらせず、実際に実践が可能な手法に落とし込んだ一連の方法論のことです。

ユーザーのために、と頭で分かっていても、実際に制作の中でそれを実現していくことは困難です。さらに、チームで開発する以上、全員が同じ認識でなければ、最終的に優良なアウトプットには結びつきません。
「こうしたらユーザーのことがはっきりと分かるし、チーム内で齟齬もなく、一つの羅針盤を持って、より確率の高いゴール(ユーザーに価値を提供できるサービス)を目指せるよ」というのが、UXデザインの趣旨であり実現できる価値だと思います。
ちなみに、すでにユーザーのことも把握しているし、チーム内で齟齬もなく、指示にブレもないという場合であれば、前述のリサーチ〜アイデア発想は飛ばして、いきなりUIデザインに入っても問題ないと思います。


UXデザインの定義や概念については人によって解釈の分かれるところなので、あくまで自分なりの解釈と説明でしたが、これは有用そうだな!と思われた方はぜひ実際にサービス開発の中でUXデザインの考え方や手法を取り入れてみて下さい。

高いレベルのUXを実現するためにはもちろん経験値が必要になりますが、基本的なUXデザインの手法を実践することはデザイナーでなくても可能です。
UX"デザイン"という名前がついているのでなんとなくデザイナーの領域のようなイメージを受けがちですが、UXデザインの手法はサービス開発に関わるあらゆる職種をまたいだもので、単一のスキルという訳ではありません。
俯瞰でサービス全体を見て、ユーザー体験向上のためにすべきことを明確にし、サービスに反映させていくというのがその役割です。
特にいま、サービス開発の罠に陥っているな……と感じている方は、基本的な手法を実践するだけでもチームとプロダクトになにか変化を与えられるかもしれません。

今回の記事の中では実際のプロセスや手法までは紹介しませんが、実践の上で気をつけたほうが良いポイントと独学で基礎が学べるおすすめの本をまとめたので、参考にしてみて下さい。

実践の上でのポイント

・ 思い込みでユーザーについて決めつけず、実際のユーザーを見て直接話を聞く。
・ユーザーの行動や思考、事実をありのままに観察して、そこから分析する。(ユーザーは自分で自分の欲しいものを理解したり言語化できる訳ではないので、声をそのまま聞かない)
・チームを巻き込んで、チームみんなの統一の指針とする。
・サービスやウェブは、ユーザーの体験の中の一部。体験全体を設計する。

独学でUXデザインの基礎が学べるおすすめの本

<9/13追記>
タイトルを変更致しました。

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