美月 蝋燭「膝を抱えて奇を衒う」

美月 蝋燭(ミヅキ ロウソク) 30代女子。東京の街。私小説。 社会の居心地の悪さに奮…

美月 蝋燭「膝を抱えて奇を衒う」

美月 蝋燭(ミヅキ ロウソク) 30代女子。東京の街。私小説。 社会の居心地の悪さに奮闘する日々。 普通になりたかったと願うふりして、今日も普通の1日を終えました。 生まれる前に欠けてしまったピースを探しています。同じあなたに、届きますように。

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寂しさの正体は

世界と反転して生まれてきた。多分自分にはそういう節があるんだと、幼い頃からなんとなく勘づいてはいたけれど、まさか齢30を迎えて、その兆候が年々色濃くなっていくなんて思いもしていなかった。歳を重ねてれば、もっと社会に馴染んで、お利口になって、物分かりが良くなっていくはずなんじゃないかと思っていた。天邪鬼とも呼ぶのだろう。真逆だった。自分で自分を乗りこなすことができないほどに、アンコントローラブルな日が増えていった。 桜が散る季節になるといつも思うことがある。 未だに、桜を眺

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      かつては白かったスニーカーを捨てた。深夜1時42分。そんなちっぽけなことで何も現実は変わりはしないさ。でも、何かを変えたかった小さな自分の衝動が、そうさせたのだろう。他に何を捨てれば、自由になれるのだろう。みんなと同じものが欲しかった。でも、みんなと同じ色は嫌だった。そんな我儘は、効率重視の世の中じゃ通用しない。 たしかにこの靴をレジ台に乗せたあの日、この靴は白と黒のコントラストに映えていた。それが今となっては、靴が時間を物語るほどに古くなっていた。お世辞にも、白い靴とは呼

      • 堕ちていくスピード

        二日酔いになっていないことが不思議なくらい、たぶん浴びた。焼酎だったか、ときどきウォッカもあったか、でもビールは避けた、それだけは覚えていた。それ以外は記憶がないし、後味の悪い恥ずかしさに包まれていて、いつもより布団が重く感じた。なんだろうか、毎度、酒に酔った日の、この、勝手に昔のアルバムを見られたような感覚は。 二次会のカラオケ部屋の景色はなんとなく浮かぶものの、財布の中にぐちゃぐちゃに入れられた領収書を見つけて初めて、ちゃんとお金を払う意識だけは残ってたんだなと憶う。そ