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Netflix実写版『幽遊白書』を見た感想


・アクションシーン
総じて素晴らしい。役者、スタント、アクション監督、映像班含め技術スタッフ、関係者全員の妥協なき熱意が伝わる。まじでどうやってこんな画になんのってレベルのクオリティ。アクションの成功がすなわちこの作品に対する評価に直結することを確信した力の入れよう。
特に街のなかでの戦闘シーンはその場のありものや環境を駆使して見ていて楽しかった。
幽助vs剛鬼は見応え抜群。


・技
主要メンバーの技に関する演出も質が高い。大仰でもなく地味でもなく、ちょうどいい塩梅。必殺技名を叫ばないのもあえてだろう。実写映画『るろうに剣心』なんかも技名は全く叫んでいなかったし、実写に応じてアニメや漫画っぽさを排除するといちいち言わないほうがリアルってことなのかもしれない。
でも黒龍波とここぞってときの霊丸ぐらいは声に出してもらっても見てる側はテンション上がるので良かったかも。


・ストーリー
魔界蟲が招く人間界への混乱を描くプロローグは良かった。GANTZやアイアムアヒーロー的なパニックスリラーとして初見の人でも楽しめる。

しかし、それ以降ここまでギュッとさせているとは。正直いってかなり駆け足に感じた。
幽遊白書という作品を実写にあたって与えられた尺の中でなんとか説明しきりました!といった詰め込み感。もはやハイライトに近い。逆にいえばこの尺の中では相当うまく凝縮させたなと。

とはいえ、個人的には今回のエピソード5話分の中では朱雀編までを描き、幽助ら4人の個性溢れる戦闘とキャラクターを掘り下げてほしかった。それか5話とはいわず、本シーズンでは朱雀〜垂金邸での戸愚呂編まで。
で、実は戸愚呂はわざと敗れただけで生きていて、暗黒武術会編を匂わして終わり、とか。

そもそも幽遊白書を人気バトル漫画たらしめた大切な暗黒武術会編が、根こそぎ垂金編に集約されてしまっていたのは残念。武術会でのキャラクターの数やスケールを考えると実写は容易じゃないんだろうけど、それこそある程度シュリンクさせて、裏御伽、六遊怪、魔性使いチームをミックスさせた妖怪軍を前座としてバトらせるとか見たかった。

原作を知る人間なら自分の頭の中でキャラクターの特徴や合間のストーリーを補完しながら見られるが、原作ノータッチで予備知識なく見た人は果たして楽しめるのだろうか。
キャラの個性や関係性を把握しきれず、感情移入もクソもない気がする。蔵馬と飛影の魅力はあの時間では到底理解できないし、幻海師範の偉大さや重要性も見出せない。幽助が早くからあそこまで闘えるのも説得力がなく、戸愚呂たちが妖怪の中でもどれだけ強いのかもよく分からない。

原作好きからしても確実に物足りなさは残るので、どっちつかずの着地は否めない。ここまで短い時間にまとめないといけないなら、そもそも実写化の必要はあったのか。

ただ最新のハイクオリティのアクションを惜しまず費やして見応えあるバトルを成立させた点、各キャラクターを原作に限りなく近いイメージで再現させている点は心意気十分。何よりあの幽遊白書を実写化するとこうなるのか!といった感動は確かにある。


・幽助
北村匠海が想像以上に良かった。彼が主演した東リベシリーズを一切見てないので、自分の中で北村匠海のイメージは好青年寄りの優男。強く荒々しいイメージはない。そんな前提を忘れるぐらいすぐに幽助であると受け入れられた。
幽助はもっとバカで一本調子なところがあるから、北村匠海だと知性や品性も必要以上に感じてしまうものの、主人公然として内に秘める優しさと真っ直ぐな熱さはバランスよく出ていた。クセがない。アクションのうまさも申し分ない。


・桑原
上杉柊平はキャスト発表当時から初めて知る役者さんで、桑原のイメージからすると顔も端正すぎる気はしたが、これまた案外違和感なかった。
桑原はひと昔前なら桐谷健太とかが合うようなキャラクターで、上杉柊平だとまた北村匠海と同じくあまりヤンキーらしくなく、その品こそ隠しきれていなかったけれど、独立した作品だと思えば悪くない。
まあでも霊剣はもうちょっと見せ場が欲しかった。時間稼ぎに雪菜たちを守るレベルの力はついていたというのは本来の自力をふまえればリアルはリアル。とはいえ戸愚呂兄を倒すぐらいの活躍があっても良かったし、そのために朱雀や暗黒武術会の前座相手が欲しかった。


・蔵馬
あの年齢ぐらいであそこまで美しい中性的なルックスを持ち、役者としてのそこそこのキャリア&知名度も求めると志尊淳は適任だったと思う。
身長バランスも絶妙、甘いマスクも嫌味がない。ただ前述の通り、蔵馬の魅力を掘り下げるには時間が無さすぎた。他の人間とも上手く絡むコミュニケーション力、飛影との関係性、考察力と智略、冷酷さ。本作では他のキャラクターとの相対性で、なんとなくこういう立ち位置なのかな?ってのは伝わるものの、いまいち深みは見えない。


・飛影
漫画実写の申し子ともいうべき存在感の本郷奏多。GANTZに代表されるように、厨二っぽいキャラクターと台詞を任されてここまでナチュラルに演じられる俳優は稀有だろう。
声がとても良くて、飛影の声のイメージにもピッタリ。
ただやはり見せ場や掘り下げ方は蔵馬と同じく物足りない。「巻き方を忘れちまったからな」の名言こそ聞けたが、原作知らなかったら唐突で意味が分からなすぎる。雪菜への想い、幽助たちに寄せる信頼感も描き切れておらず、全体を通して唐突で不完全燃焼。


・戸愚呂弟
綾野剛と聞いたときは首を傾げたものだけど、サングラスを装着した実写版の再現性は高かった。低くて深みのある声も戸愚呂に合う。残念だったのは100%になった後。それまでリーゼント寄りで良かったのに、急に綾野剛でしかない髪型に戻り、サングラスが取れたこともあって首から上が完全にただの綾野剛。首から下とアンバランスすぎてギャグみたいになっていた。
せめて髪はもう少しオールバックかリーゼントをキープして欲しかった。


・左京
ある意味、今回の実写版の主人公だった。左京のスピンオフ作品でもいけそうな存在感。稲垣吾郎のキャスティングは完璧に近い。ネジの外れた独特の厭世観と危険思想を持つ左京を、物憂げな表情と艶のある声で仕上げていた。原作の「侵入者が勝つ方に66兆…」のあのセリフも聞いてみたかった。


・その他
滝藤賢一演じる戸愚呂兄や垂金は言わずもがな、おおむね全般的に実写化の再現性は高かった。
こういうのって必ずしも限りなく原作に似せてくれ!とも思わないんだけど、かといって開き直って似せる気がさらさらないのも、それはそれで冷めちゃうからね。

白石聖の雪村螢子は素晴らしかった。雪菜役の見上愛も可愛かった。鴉に清水尋也をあてがったのも絶妙。

ただ事前にネットでも色々言われていたぼたん 役の古川琴音…役者として好きだし彼女が悪いわけでもないんだけど、ぼたん役は相応しかったかというとやはり肯定はできない。

幽遊白書におけるぼたんは、特に初期であれば螢子よりもヒロインのポジションなので、そこに据えるには妖しさや色物っぽさのが際立っていた。古川琴音の愛嬌ある丸顔とチャーミングさは、ぼたんとはベクトルが違う。
ぼたんの着物+あの鮮やかな髪色を違和感なく実写化するにはハードルが高いと思う。だからこそ、かつらも衣装も安っぽくならないようもっと頑張ってほしかった。もう少し顔は面長かつ色白の女優さんで、ポニーテールも貫いていれば違ったかもしれない。
それに見上愛と古川琴音は雰囲気や顔つきが遠からずの2人だと思っていて、その2人が数少ない女性キャラの中に並立していたのも違う感じがした。

好き勝手偉そうに書いたけれど、見て後悔するようなレベルでは決してない。純粋なバトル映画として、あの幽遊白書の再現性を楽しむ作品として、十分なクオリティである。

街のなかを舞台にしたバトルや、より心理や個性をふまえた戦闘が魅力的になりそうなポテンシャルも感じたので、もしシーズン2で仙水編をやるならば、そっちのほうが期待は高く持てそう。

殴り飛ばされた戸愚呂兄が島の砂辺に転がってるシーンはきちんと描かれていたしね。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います