アメリカの歴史

⒈ 植民地時代

スペインの植民地化(1492年~1821年)

スペインは最初にアメリカ大陸に到達したヨーロッパ国家であり、中南米やカリブ海地域を支配しました。スペインは金銀や砂糖などの貿易で富を得ましたが、先住民やアフリカ人奴隷に対する虐待や伝染病の拡散などの問題も引き起こしました。スペインは現在のアメリカ合衆国の領域にも幾つかの植民地を建設しましたが、ほとんどは失敗に終わりました。スペインの植民地は19世紀初頭に独立運動が起こり、次々と解放されました。

フランスの植民地化(1604年~1763年)

フランスはカナダやルイジアナを領有し、毛皮貿易や宣教活動を行いました。フランスは先住民と友好的な関係を築き、多くの場合彼らと同盟しました。フランスはイギリスと度々争い、七年戦争で敗北し、北アメリカ大陸のほとんどの植民地を失いました。

オランダの植民地化(1614年~1664年)

オランダはニューネーデルラントと呼ばれる植民地を現在のニューヨーク州やニュージャージー州に建設しました。オランダは貿易や農業に重点を置き、多くの民族や宗教の移民を受け入れました。オランダはイギリスと対立し、1664年にニューネーデルラントをイギリスに奪われました。

イギリスの植民地化(1607年~1783年)

イギリスは13の植民地を建設し、タバコや綿花などの農産物や奴隷貿易で利益を得ました。イギリスは議会制度や法制度などを導入し、自由主義的な社会を形成しました。しかし、イギリスと植民地の間には税制や貿易などの問題で対立が生じ、1775年に独立戦争が勃発しました。1783年にパリ条約が結ばれ、イギリスは13植民地の独立を承認しました。

⒉ 独立から南北戦争まで

独立戦争と建国(1776年~1789年)

アメリカはイギリスからの圧政に反発し、1776年に独立宣言を発しました。イギリスとの戦争は1783年にパリ条約で終結し、アメリカは13植民地の独立とミシシッピ川以東のルイジアナの領有を認められました。しかし、独立後のアメリカは連合規約という弱い政府体制により、各州間の対立や財政危機などに悩まされました。1787年に憲法制定会議が開かれ、連邦制や三権分立などを盛り込んだ新しい憲法が作成されました。1789年にジョージ・ワシントンが初代大統領に就任し、アメリカ合衆国が正式に建国されました。

西部開拓と領土拡大(1789年~1848年)

アメリカは西部への開拓を進めるとともに、領土を拡大するためにさまざまな方法を用いました。1803年にフランスからルイジアナを買収し、1804年から1806年にかけてルイス・クラーク探検隊が太平洋岸まで到達しました。1812年から1814年にかけてイギリスと米英戦争を戦い、1819年にスペインからフロリダを獲得しました。1820年代から1840年代にかけてオレゴン・トレイルやサンタフェ・トレイルなどの陸路を通じて多くの移民が西部へ向かいました。1845年にテキサス共和国を併合し、1846年にオレゴン協定でイギリスとオレゴン地域の境界を画定しました。1846年から1848年にかけてメキシコと米墨戦争を戦い、1848年のグアダルーペ・イダルゴ条約でカリフォルニアやニューメキシコなどの南西部地域を獲得しました。

奴隷制度と南北対立(1848年~1861年)

アメリカは領土拡大とともに奴隷制度をめぐる対立も深めました。北部では産業革命が進み、奴隷制度への反対運動が高まりました。南部では綿花栽培が盛んになり、奴隷制度への依存度が高まりました。1850年には領土拡大に伴う奴隷州と自由州の均衡問題を解決するために妥協案が成立しましたが、1854年にはネブラスカ=カンザス法が成立し、新たな領土で住民投票で奴隷制度の是非を決めることとなりました。これにより奴隷制度賛成派と反対派の対立が激化し、カンザスでは内戦が起こりました。1857年にはドレッド・スコット事件で最高裁判所が奴隷制度の合憲性を認めました。1859年にはジョン・ブラウンが奴隷反乱を起こしましたが、失敗に終わりました。1860年には奴隷制度反対派のエイブラハム・リンカーンが大統領に選ばれました。これを受けて南部の11州が連邦からの脱退を宣言し、アメリカ連合国を結成しました。

⒊ 南北戦争から第一次世界大戦まで

南北戦争(1861年~1865年)

アメリカ合衆国の南部11州が奴隷制度の存続を主張して連邦から脱退し、アメリカ連合国を結成しました。これに対して北部23州は連邦の統一を守るために戦争を開始しました。南北戦争はアメリカ史上最も犠牲者の多い戦争であり、約70万人が死亡しました。最終的には北部が勝利し、奴隷制度は廃止されました。

再建時代(1865年~1877年)

南北戦争の終結後、南部の再建と黒人の市民権確立が問題となりました。当初は北部が南部に対して厳しい政策をとりましたが、次第に寛容な姿勢に変わりました。しかし、南部では白人至上主義や人種差別が根強く残り、黒人に対する暴力や差別が横行しました。

ギルド時代(1877年~1898年)

再建時代の終わりから第一次世界大戦の始まりまでの時期をギルド時代と呼びます。この時期は産業革命や都市化が進み、アメリカは経済的に発展しました。しかし、社会的な不平等や政治的な腐敗も深刻化しました。また、西部開拓や海外進出も行われました。

プログレッシブ時代(1898年~1918年)

ギルド時代の問題に対して改革運動が起こった時期をプログレッシブ時代と呼びます。この時期は社会正義や民主主義を求める活動家や政治家が活躍し、労働者や消費者、女性や少数民族などの権利向上や社会福祉の充実などが行われました。また、第一次世界大戦に参戦し、世界の指導的な役割を果たしました。

⒋ 第一次世界大戦から現代まで

パックス・アメリカーナ形成の時代(1918年~1945年)

第一次世界大戦を通して資本主義世界の中心ともいうべき地位を占めたアメリカは、1930年代の経済危機をニューディール政策で乗り切るとともに、第二次世界大戦に際し、連合国側を勝利に導くうえで指導的役割を演じました。超大国としての地歩を確立し、戦後パックス・アメリカーナ的状況の下に世界的な規模で反共封じ込め網を形成しました。

冷戦とベトナム戦争の時代(1945年~1975年)

アメリカはソビエト連邦との間に冷戦状態に入り、核兵器や宇宙開発などで競争しました。アメリカは韓国や台湾などの反共国家を支援し、朝鮮戦争やベトナム戦争などに介入しました。しかし、ベトナム戦争はアメリカに多大な損失を与え、国内では反戦運動や公民権運動が高まりました。また、ケネディ大統領やマーティン・ルーサー・キング牧師などの暗殺やウォーターゲート事件などの政治スキャンダルも起こり、アメリカ社会は混乱しました。

新保守主義とグローバル化の時代(1975年~2001年)

アメリカは冷戦後半にレーガン大統領やブッシュ大統領の下で新保守主義的な政策を展開し、軍事力や経済力を強化しました。アメリカはソビエト連邦との関係改善や中東和平交渉などにも積極的に関与しました。1989年にはベルリンの壁が崩壊し、1991年にはソビエト連邦が崩壊し、冷戦は終結しました。アメリカは唯一の超大国として世界に影響力を持ち、グローバル化や情報化が進みました。しかし、湾岸戦争やコソボ紛争などの地域紛争やテロリズムなどの脅威も増えました。

9.11テロ以降の時代(2001年~現在)

アメリカは2001年9月11日にニューヨークとワシントンD.C.で発生した同時多発テロ事件(9.11テロ)に衝撃を受けました。アメリカはテロ組織アルカイダとその後ろ盾であるタリバン政権を打倒するためにアフガニスタンに侵攻しました(アフガニスタン紛争)。また、イラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、イラクにも侵攻しました(イラク戦争)。しかし、これらの戦争は泥沼化し、アメリカの国際的な信頼や威信は低下しました。アメリカは2008年に金融危機に見舞われ、経済的にも苦境に陥りました。オバマ大統領はテロとの戦いや経済再建のほか、医療改革や気候変動対策などに取り組みました。トランプ大統領はアメリカ第一主義を掲げ、貿易や移民などの分野で保護主義的な政策を推進しました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や人種差別への抗議運動などの対応に批判が集まり、2020年の大統領選挙で敗北しました。バイデン大統領はトランプ政権の政策を見直し、国内の統合や国際協調を目指しています。

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