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山田、死ぬことすら許してやんないからねー #6


 「身体」というものに、興味がある。自分の位置する〈今ここ〉を絶対的に証明してくれるもの。私が〈今ここ〉で、この場所に存在することができている、という、確かなる証明。古橋ちゃん、男女ともに、身体の大きな人が好き。肩幅ががっしりとしていて、手足がしなやかに伸びていて、骨が太く、関節が大きいと、その人がしっかりと目の前に存在している気がしてくる。そういうもの。そういう、成熟した肉体を持つ人間だけが放つ存在の確かさに、ずっとずっと憧れてきた。
 初めて人を好きになったのは、ちょっと遅くて、中学2年生のとき。お相手はやっぱり背の高い、ガタイのいい男の子だった。別に彼がやさしくしてくれたから、イケメンだったから、足が速かったから、好きだったんじゃない。ぜんぜんモテなかったし、むしろ、ブスの類だった。でもほかの男の子に比べて、発達が早くて、身体ができていたから、好きだった。ちゃんとそこに存在してくれていたから、好きだったんだ(中学生男子の身体は頼りなく、完成していないため、実存しているのかも危うくて、それが早熟な(?)古橋ちゃんを怖がらせていたのだ)。まあそいつとは最後まで何にもなくて、大学生になったときにいきなり連絡が来てキモかったからブロックした、それだけの関係だったんだけどさ。


 山田の話をしよっか。

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