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2023 短歌

2023年に作って、覚えているやつ、、
思い出したら追加します


〈遠野旅行〉

踏みしめて歩く遠野の畦の道 胡瓜を持ちて河童釣る子ら

ぶうん、ぶんとエンジン掛けし老体の蔵の書ごうと燃ゆる日 思いき

どんど晴れ遠野の道を歩くとき だれが生きてもよいと言うこと

〈ガウディ展〉

逆さまにつられて核の形した教会よろしく死んだ老人

口づけを一度もさせぬおまえいて建造物はぼろぼろになる  

〈山田とのこと〉

ふりかえって気にしてくれたら嬉しくてゆっくり歩く、困らせる、好き

身を削られているような思いする深夜0時にSuicaかざして

フランスの愛の映画を観てました 痴漢の息が荒い終電

じゃあまたと言われるたびに またがあると思えるこれも短歌にしよう

熱病のおまえの息に耳すます わたしの国ももう燃えている

ブルーベリージャムの粒の部分(病気)集めてすくう おまえが好きだ

誰か俺を殺してくれと繰り返すおまえの言葉噛み締め帰る

ドトールからまっすぐ歩いてくる君よ日曜 鶯谷駅西口

正常に機能をしない陰茎を含んで思う 母が恋しい

ときめきはもういらないよ 聞こえない きみの膨らむ亀頭をなぞる

しぼみつつある花びらを見届けてせっくす抜きで会いたい日もある

公房を好むお前と歩く狭い狭い新宿 きたない、いとしい

ほんとうのことを言われた駅前で雨が止むのをじっと待ってる

「きのうやまだとせっくすするゆめをみた」「どうだった?」「うん、ほんものがすき」

「おれだけだ お前を好きにできるのは」そうだと思う 墓地へゆく道

雨が降る おまえの左腕抱いて来世は花になれると思う

わたしもうおまえが好きでゆっくりと岸を離れて沈む笹舟
  

〈貧読〉

向日葵は重なるように身を寄せてスタインベックはかくも優しき

働くか死ぬか辞めるか教室で二十三時に読むブコウスキー

〈広島、愛媛旅行〉

尾道の漁港の果てに救い見てパプステマ享く聖書買う夏

あいまいな日本のわたしその森は燃えてしまって誰も知らない

夏の宵 走るはだれの遊撃手あるものだけを両手に受けて

しなだれた金の稲穂が広がって祖国はありや ゆくブロードリー


〈いつ死んでもいい男〉

いつ死んでもいい男が言う 今日はもうスワンボートはやってませんか

俺のこと癒してほしいという人のなまぐさい息 アイス食べたい 


映画見に行きませんかという人のなめらかな皮膚 のっぺらぼうの

おまえではない肉を持つとししたの男の腕に抱かれ見る火事 



〈ママとわたくし〉

光あれ 分娩台に乗せられてこのまま星になるかと思いき

子宮頸がんの注射もせずにいて いつかは死んでいく女の目

あたたかな雨に降られてあなたから貰った飴が舌で溶けゆく

母さんは男とおんなどっちが好き?それからずっと兄になりたい

ママがすき しにたい時に一つだけ舐めるいちごのミルクキャンディー

あいにきてよかったきみを見られるし死にたいときはなんでもできる

シュトレンをきみといっしょに食べるとき ななひゃくまんねんぶりのしあわせ


つづく







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