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2023年10月の七ならべ

※ここでは、七音のフレーズのみで構成された詩形式を「七ならべ」と呼んでいます。
ThreadsやXなどにあげたものを再掲します。



秋の果実は
迷いがなくて
カゴの中でも
微笑んでいる
傷つくことを
恐れないのは
傷つくことを
まだ知らないか
傷つくことに
慣れきったのか
いずれにしても
ぼくは彼女を
傷つけるしか
ないのだろうか
迷いはいつも
いろとりどりで
落ち着く椅子も
汚されたまま
(2023年10月4日)



嵐の夜は
嘘とホントが
同じ数だけ
生まれて消える
きみに関する
青い記憶が
濡れないように
手帳を汚す
週末の夜
ぼくだけが知る
北海道の
しなやかな場所
いつかきみにも
見て欲しいんだ
(2023年10月6日)



夏を粗雑に
終わらせたから
並んだ本は
全部読みかけ
記憶がとおく
逃げないように
青を吸い込む
快晴の午後
楽しい日々を
読み返しても
記憶が動く
ことはないから
ぼくの未熟な
ものがたりなど
あなたの空に
溶けちゃえばいい
(2023年10月8日)



月の孤独に
寄り添うように
窓の汚れを
過去に流そう
静かの海も
泣いているけど
すれ違うこと
できただけでも
奇跡だったと
今なら言える
もうすぐ冬に
染められたなら
ぼくの記憶は
メレンゲになる
あなたの影を
混ぜることなく
(2023年10月10日)



ずいぶんまえに
ついたてがみの
とおくのきみは
ずるいかおして
ついうっかりと
とじてしまった
きらきらひかる
つまさきあれば
とがったゆめも
きにならなくて
つながるあさに
とんでいきたい
(2023年10月15日)



まるい木の実を
さがしてみよう
あのひとの影
踏まないように

乾いた風を
さがしてみよう
泣き疲れても
空はあるから

秋のぬくもり
さがしてみよう
わすれたはずの
耳朶のうら

ぼくのこころを
さがしてみよう
冬はもうすぐ
この町に来る
(2023年10月22日)



めがさめるたび
消えてゆくもの
追いかけるのも
またさみしくて

丘のうえから
海を見ていた
教訓のない
むかしばなしは
無駄な演出
多すぎるから

ぼくのあしたは
からっぽのまま
さかみちかぜが
連れ去ってゆく
(2023年10月29日)



城郭都市に
生まれた恋は
疑心暗鬼に
耐性がない
ことばは壁を
すり抜けるけど
ふたりの明日が
何色なのか
わからないまま
染められている
辿った路を
振り返る朝
戦慄の眼を
手に入れたなら
冷えた秘密は
まだ終わらない
(2023年10月31日)

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