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2024年2月の二の字

二の字とは文字数を揃えた(基本同字数)二行詩で

 雪の朝二の字二の字の下駄のあと

の名句から、勝手にそう名付けているものです。




ほんとうの自分を見つけたいと言って
どれだけのプリンが消費されただろう
(2024年2月1日)


向かい風に奪われないように
春につながっている道を歩く
(2024年2月3日)


雪は徐々に重さを手に入れて
ぼくはいつまでも動けないよ
(2024年2月5日)


二月の空がどこまでも青かった日に
疑うことを覚えて大人になったんだ
(2024年2月6日)


流氷にも天然色の記憶があって
もう戻れないと鳴いているんだ
(2024年2月8日)


真夜中のコインランドリーで
あの日のふたりが踊っている
(2024年2月10日)


この道を歩いたこともいつか忘れて
白いことばだけが耳の奥に残される
(2024年2月11日)


生きた証を残そうともしないで雪は
春を予告し始めた空を見上げている
(2024年2月13日)


春はどうしてさびしいのだろう
握る手がいつか緩んでしまった
(2024年2月15日)


遠い記憶をたくさん集めて作られたから
海は塩辛いんだ。いつか還る場所なんだ
(2024年2月18日)


夜は日ごとに身を削ってしまうから
無色の感情はもうどこにも行かない
(2024年2月19日)


きみが好きだったのど飴舐めて
こんなにも春は苦いものなのか
(2024年2月21日)


春が好きときみが言ったから
麗色のハンカチを買いました
(2024年2月21日)


数え切れない星をひろげて
ぼくたちはもうすれ違えない
(2024年2月22日)


意思のままに舞っているようで
どこまでも記憶に縛られている
(2024年2月23日)


春の月はすべてわかっている顔をして
戸惑いが止まないから霞んでいるんだ
(2024年2月24日)


いつか手放したはずの恋なのに
いまも駅のホームに西風が吹く
(2024年2月26日)


海が日々流暢になっているのを
素直になれないぼくが見ている
(2024年2月27日)


はじめての街を歩くように
あなたの嘘を通り過ぎたい
(2024年2月29日)

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