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2023年12月の七ならべ

※ここでは、七音のフレーズのみで構成された詩形式を「七ならべ」と呼んでいます。
Xやmastodonなどにあげたものを再掲します。




象形文字の
生まれる夜に
見上げる星は
偽物だけど
ことばにのせる
感情だって
ホントかウソか
わからないから
抱えきれない
固い結び目
鞄に詰めて
止まない雨に
影を溶かそう
(2023年12月3日)


なにかを閉じて
冬がはじまる
それがなにかは
わからないまま
葉がなくなった
木々の向こうに
まだ体温は
あるのだろうか
ふたしかなこと
いくつかぞえて
もうすぐ街が
にぎやかになる
(2023年12月4日)


知らないことを
知らないままに
しておけなくて
星のかけらを
数えはじめた
望んだものが
手に届くとは
限らないけど
十二月だし
願いごととか
秘めていたって
不自然じゃない
星のかけらは
夜明けの人に
みつかることは
ありえないから
独り占めして
このまま夜に
居続けるんだ
(2023年12月8日)


つめたくなって
痩せた昨日の
ぼやけた景色
見てしまったら
あたたかい手は
どうすればいい?

殺し合うのが
仕方ないなら
夜も秩序も
焼いてしまおう
まだその方が
救われるから
(2023年12月11日)


雪の迷いを
知ってしまえば
目を逸らすなど
出来るわけない
どんなに寒い
夜だとしても
ここにいること
伝えたいから
星座になんか
なれないけれど
消えないように
揺れないように
(2023年12月14日)


感情なんて
花火のように
消えるものだと
思ってたけど
花火のように
記憶に残る
ものと気づいて
凍える窓に
書いたことばが
まるで真理の
ように嘯く
煌めく街に
戻りたいとは
思わないけど
冷めてしまった
缶コーヒーを
手放すことは
できないだろう
(2023年12月18日)


星の会話に
耳をすませば
ひとりの夜も
寂しくはない
しあわせなひと
そうでないひと
そのどちらにも
なれないぼくは
ぶっきらぼうな
よろいを脱いで
もう一度だけ
歌ってみるよ
きみが見てても
見ていなくても
あの約束を
歌ってみるよ
(2023年12月22日)


青い夢から
覚めてしまえば
色とりどりの
孤独な世界
記憶は海で
できているから
その断片が
忘れた頃に
押し寄せてくる
そしてぼんやり
ずぶ濡れている
波がすっかり
消えてしまえば
わたしの中の
あなたも消える
ただ穏やかな
海だけになる
(2023年12月23日)


居心地の良い
部屋を探して
何度も生まれ
消えてきたけど
結局それは
どこにもなくて
書くことさえも
雪雲になる
(2023年12月23日)


夜更けを待たず
雪は降り出す
希望のような
おまけのような
いずれにしても
ぼくは今夜も
中途半端に
やさしいきもち
持て余しては
ひとりの酒を
奏ではじめる
届いて欲しい
わけじゃないけど
埋もれて欲しい
わけじゃないから
(2023年12月24日)


なくしたものと
また出会えたら
どんな表情
すればいいのか
わからないまま
冬の節目を
見送っている
聖夜にひとり
プリンのような
揺れる思考に
溺れちゃうけど
白いなみだを
流せば、あとは
よあけのおとが
すべて飲み込む
(2023年12月24日)


なにを探せば
良いのかさえも
もうわからなく
なってしまった
それでも道は
続いているし
歩みを止める
わけにいかない
来年という
未知は昏くて
振り返っては
既知も昏くて
最終回が
来ないドラマの
火を消したいと
思ったりもする
そんな戯言
吐いているけど
朝はふつうに
やってくるよね
(2023年12月28日)


月のなみだに
触れたひとなら
やさしい闇に
守られている
重力なんて
幻想だから
たいせつなもの
ポケットに入れ
その衝動で
空も飛べるよ
それを夢だと
言うのであれば
すべてが夢で
かまわないから
(2023年12月28日)


凍てつく夜の
宙を見上げて
星の数だけ
後悔がある
ぼくのことばは
毒を抜かれて
味も匂いも
拍動もなく
淡い星座を
結び始める
届かなくても
書き続けると
言えるほどには
強くないけど
きみを笑顔に
したい気持ちが
雪に埋もれて
動けないんだ
(2023年12月30日)


時の行方を
追いかけたくて
もう捲れない
日めくりをみる
手にしたものや
うしなったもの
それらはすべて
霧だったから
気持ちはきっと
騒めくけれど
ぼくはあしたも
ことばならべて
風を待つしか
できないだろう
(2023年12月31日)



旧年中はたいへんお世話になりました。
今年もよろしくお願いいたします。

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