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夏合羽

【チェンマイ俳句毎日】2024年5月11日

手遅れの路肩に広ぐ夏合羽

デラウェアほどの日照雨に打たす顔

きつぱりと煙害去りて夏の空

スーパーのレジに並んでいると、入口から猛烈な風が吹き込んできた。これは雨が降りますね、とレジ係の女性が言う。待ちに待った雨だが、濡れるのは嫌だ。風で飛ばないよう、バイクのカゴにトイレットペーパー12巻入りの大袋をしっかりくくりつけた。どうか袋に穴が空いていませんように(苦笑)。

大通りに出た。強風に煽られてバイクが大きく揺れる。交差点で信号待ちをしていると、とうとう盛大に降り出した。大きな雨粒が容赦なく顔に当たる。前のバイクの男性が、先頭のバンの車体にくっついて雨を避けようとしているので真似をしてみたが、気休めだった。

雨合羽は常に準備しているが、車が多くて路肩にバイクを寄せる余裕がない。せめてこの交差点を曲がれば、車量が減るので路肩に停められるはず…。
長い信号待ちの後、少し走った先でようやく合羽を出すことができた。もう遅い気もするが、これ以上濡れないよう、着たほうが無難だろう。
前にも後ろにも荷物を背負っているからふたりでひとつの合羽を着ているようなもの。とにかく荷物を濡らさなければそれでいい。しばらく辛抱して冷たい雨に打たれていると、そのうち光がさして天気雨になった。地表で砕け散る雨粒が西日を透かして、白い霧状に立ち上がっている。なんとまあ幻想的なことか。
よくあることだが、家につく頃にはすっかり雨はやんで、澄みきった空が広がっていた。


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