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たんぽぽ

【チェンマイ俳句毎日】2024年4月27日


たんぽぽやアルミニウムのべんとばこ


   実家の食器棚の奥から、保育園時代のアルミニウムのお弁当箱が出てきた。ディズニーのバンビの絵。懐かしい。昭和感たっぷりのお弁当箱の蓋を開けたら、一気に幼稚園時代の記憶が蘇った。

   同じたんぽぽ組の仲良しで、普段からイタズラ好きのたかちゃんが、ちひろちゃんのお弁当を隠そうと誘ってきた。

   もちろん、ほんのちょっとびっくりさせるだけだ。たかちゃんは、ちひろちゃんのお弁当箱を私の机の中にさっと隠した。

   私は幼い頃からひどく忘れっぽい性格で、あろう事か、ちひろちゃんのお弁当を隠したことを完全に忘れてしまった。

   いただきますの挨拶の時に、お弁当を忘れたと言ってちひろちゃんが泣きだした。先生が、「お弁当をちひろちゃんに分けてくれる人、手をあげてね」とみんなに呼びかけ、私はかわいそうにと進んで自分のお弁当を分けてあげた。

   私の机からどんな風にちひろちゃんのお弁当箱が出てきたのか、その経緯は忘れたが、もちろんイタズラはばれ、たかちゃんと一緒に昼寝の時間中立たされた。たかちゃんは、私が知らんぷりしているのでびっくりしたらしい(そりゃそうだ、ごめん)。

    たっぷり叱られて、しゃくりあげていた私だったが、幼い頃は母がよくおしゃれな服を着せてくれていて、その日は黒いパイピングと紐ボタンがポイントのチャイナ服風の白いワンピースだった。すみれ組やさくら組の先生達も集まってきて、なんで泣いてるの? まあかわいい服ほらよく見せて、などとやさしく声をかけてくれた。

  このお弁当に何が入っていたっけ。卵焼きとかウインナーとかうさぎのりんごとか。今はほとんど料理をしない母が、毎朝このちっちゃなお弁当箱に手料理を詰めてくれたんだなあと思うと、なんだか捨て辛い。



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