見出し画像

御代川敏志という男

また随分久々なノートになってしまった。1年半ぶりにノート書きます。
今回は2月4日に大阪でGRACHANフライ級のタイトルマッチに挑む御代川敏志という男について書いてみたいと思う。

結論から言うと御代川君は私が出会った頃とはかなり別人になったという事である。

2013年8月

私の携帯の写真フォルダに残ってるいる最も古い御代川の写真はこれだった。
日付は2013年8月4日とあるので11年近く前、御代川君18歳。
この写真の日はたしか御代川のアマチュアデビュー戦でP'sLAB(現パンクラスイズム横浜)でアマチュアパンクラスに出た時の写真だ。後ろに映っている横浜文体も今はもうない。
写真を見て思い出したがこの日御代川はアマチュアでは禁止されているグラウンド状態でのパウンドを打ち、レフリーに注意されて試合再開するも何を思ったか再びグラウンド状態でパウンドを打ち前代未聞の失格負けになるという事件を起こした。
試合終了後なぜ2回もパウンドを打ったのか聞いたら
「怖くて…」と泣き崩れながらこぼしたのであった。
意味がわからなくてこえーのはこっちだよと思ったのをよく覚えている。

またある日当時所属ジムのプロ選手グループラインに御代川のアカウントから突然
「すいません、俺サトシの友達っす。今サトシ潰れちゃって大変で。誰か助けに来れませんか?」というLINEが入った。
この日は徳さん(徳留一樹)のパンクラスタイトルマッチの日で選手全員が会場入りして一丸となって集中して緊張して張り詰めた空気の中届いたラインであった。その緊張や集中が全て御代川への殺意に変わったことを覚えている。笑

またABLAZE八王子創業時、マットの施工などを後輩達に手伝ってもらったのだけど、御代川は時間になっても現れず夜になって「すいません。八王子に行く電車賃がありませんでした」とLINEをして来た。それは全然いいけど交通費もなかったってどんな生活をしてるんだ?と思った。

このように素行にも問題もあったしアマチュアの頃の御代川はとにかく弱かった。当時プロ2,3戦くらいだった自分のウォーミングアップにもならなかった。
そしてとにかくだらしなかった。練習も来たり来なかったり。元々口数が多い方でもないし何がしたいのか、何が目標なのか、よくわからなかった。けど私はどこか可愛げのあるこの17歳下の青年を可愛がってよく飯に連れて行ったり飲みに連れて行ったりしていた。

御代川の写真を探すと何か食ってる写真ばかり出てくる。大体誰かの金で食わせてもらってるものだ。

20歳を過ぎても仕事もせず親の脛を齧りながら真剣に格闘技もやらずダラダラと過ごす御代川青年は常に金がなかった。
その日食うものにも困る勢いで、その頃はあげると一番喜ぶものは米だった。

格闘技も真剣にならないものだから、同じくらいにMMAを始めたアズキンにもプロ昇格を先に越されてしまった。

現立川アルファトレーナーのアズキン

その後なんだかんだでアマチュアで勝ったり負けたりを繰り返しながらプロ昇格を果たす。

多分プロデビューしたての頃

プロになってネオブラ準優勝などの実績は残すもやはり勝ったり負けたりを繰り返していまいちパッとしない時期が続く。

そして事件が起きる。
後輩へのイジメ問題で所属をクビになる。今までのやらかしが可愛く思えるほど笑えない事件であった。
この頃の御代川はプロになって天狗になったり、クラブのセキュリティをやったりして調子に乗っていた時期だった。自分より弱い選手を私などの口うるさい先輩のいないところでかなり執拗にいじめていたようだった。
自分はいじめの現場は見ていないがスパーリングでかなり強くやってダウンさせたりしているのを見て注意したことはあったがあまり聞く耳持たずという感じであった。こういうのも全て御代川の心の未熟さが引き起こした事態だと思ってる。
ただいじめを受けていた選手もそこで格闘技をやめずコツコツ続けて今はプロになっている。あの悔しさがあったから強くなれたのかもしれないし、格闘家なのだから格闘技でいつかやり返せばいいと思う。

御代川は別のジムに移籍したがそこでも代表の怒りを買いすぐに退会になってしまう。
SNSでも色々と随分炎上して御代川の心も廃れていったように見えた。
行き場を失った御代川は夜中に1人で公園でシャドーしたり筋トレしたりする日々を送る。
試合をする場も失ってしまったので自分がfighting Nexusでの試合を山田さんに頼んで組んでもらったもののこれもドタキャン。
この頃は御代川にとってはドン底であったと思うが、当時本人にも伝えたが自分の未熟さゆえに起こったことだから自分が反省して変わるしかない。格闘技が好きなら辞めずに続ければいつか報われる。そんな感じの言葉をかけたように記憶している。

兄弟のように仲の良かった亀ちゃんとうちに泊まりにきた日
楽しい夜だった
亀ちゃんも今やトップファイターの1人

世間体も最悪だし、御代川の味方はいなかった。
自分もどう考えても御代川が悪いし本人の巻いた種なんだけどやはり昔から可愛がっていたのもあって何か助けになるような事があればしてやろうと思っていた。

そんな頃今の所属に変わり何年かして御代川に変化が現れたように思う。周りに恵まれたのか、はたまた自分自身と向き合う努力をしたのか、格闘技に真剣に向き合うようになり、周りの人へ感謝が出来るようになったように見えた。
ABLAZEにもよく練習に来てくれるが、自分の弟子にも会員さんにも丁寧な指導をしてくれる。昔からゴニョゴニョ小さい声で何を喋ってるかわからなかったが、指導の時にはっきりとわかりやすく相手の目を見て喋ってるのを見て随分と変わったなと感じた。

そして連勝街道が始まる。
戦いの場をGRACHANに移してフライ級トーナメントに参戦したくらいから毎回チケットを買って応援に行くようになった。試合のたびに御代川は強くなっていったと思う。そしてフライ級トーナメントを優勝してついにタイトルマッチの権利を手に入れた。
明日、今までやって来た格闘人生の答えが出る。
自分は家族や弟子達も連れて大阪まで応援に行ってくる。
あの頃の御代川はもういない。今の御代川は打撃も組みも寝技もトータルで勝負できる立派なトップファイターの一人だと思う。人間性も身につけた。過去はもう変えられない。だから今からを変えていくしかない。過去に御代川以上に人生において失敗を重ねて来た自分もそう言い聞かせて今までやって来た。

私は自分の取れなかったベルトを弟子達に取ってもらうのが今の夢だけど、御代川や亀井や他の後輩達にも同じように思っている。だから全てをぶつけて人生をひっくり返して来てほしい。
後ろを向かず、前へ、前へ。

御代川にとっては思い返したくない耳の痛い話ばかりだったとは思うけど…笑
人間性というのは顔に表れる。これは誤魔化しが効かない。
これを読んでいる人たちに伝えたいのは、御代川敏志という男は変わったという事だ。
別に良い奴に生まれ変わったということではないだろう。格闘技には狂気が必要だしその狂気は良い意味で磨かれているように見える。でも今の御代川は昔の駄目なアイツではない。

全てかけて、全てをひっくり返すのを見届ける。
決戦は2月4日、GRACHAN大阪大会。
大丈夫、もう一人じゃない。
自分を信じて、行って来い。


あれから11年後の2024年
お気に入りの写真

この記事が参加している募集

眠れない夜に

今後の活動の糧とさせて頂きます。よろしくお願いします。