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幸せの虹が架かりますように

仕事終わりの雨の駐車場
傘をたたみ車に滑り込む
今日は休日出勤
車も2台しかない
エンジンをかけたまま
しばらくボーッと遠くを見つめる

車の前を通る人影
作業道具を入れた段ボールを持って
雨に打たれながら歩くあの人がいた

本当はあの人に走り寄って
傘を差し出したかった
でも、出来なかった

皆んなが過ごしやすいように
誰も気づかない細かい事を
さらりと黙ってやってくれる人

誰からも感謝の言葉をもらわないのに
優しさを人に与えて
いつも笑っている
その笑顔が眩しくて  
存在自体がキラキラしてる

私は車の中から
「お疲れさまでした」と
深くお辞儀をした

半年前の同じ風景を思い出す

少し猫背でちょこちょこ早歩き
高校の時に好きだった人に
仕草が似ていた
細くて背の高い後ろ姿も
なんとなく似ている

そう思った瞬間
心のどこかに隠してあった
熱い気持ちが込み上げてきた

もう私には訪れないと
諦めていた気持ち

あの時から、何でもなかったあの人が
少しずつ特別な人へと代わっていった

灰色だった毎日が
カラフルな毎日へと変わった
自分を変えようと努力する様になった

長い間大切だと思っていたものが
本当はガラクタだったことに気付いた
そのガラクタを守るために  
嫌なことを我慢して 
無理して笑わなくてもいいんだと
思えるようになった
そうしたら今まで嫌いだった自分が
少し好きになれた

あの日を境に
私の人生が大きく変わった

時々しかあの人に会えないけど
会えた日は心から喜びが込み上げる

たった一度だけあの人と
見つめ合ったことがある
真っ直ぐな眼差し
茶色い瞳に
吸い込まれそうになった
あっという間に周りの人達に
邪魔されたけど
あんなこと生まれて初めてだった

会いたい時に会えなくて
でも突然現れる不思議な人

私だけが知っている努力の人
私の大好きな人

雨はやんで雲の隙間から深い水色が
覗き込んでいる

どうか、あの人に
幸せの虹が架かりますように

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