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小さな希望だけは

全てを諦めたら
苦しみから解放されて
楽になるのかな

ベランダに出て
夜の風に吹かれる
木の上から聞こえるコオロギの声
いつの間にか夏は去り
音も匂いも風の冷たさも 
すっかり秋色になってしまった

私の恋は一瞬の春だけで
夏も秋もないまま冬になってしまいそう
そう思って片思いの人を
忘れようとした

でも思うようにはいかなかった
「今ごろ仕事の休憩時間かな」
「このマンガ全巻読んだって言ってたっけ」
「この料理はマヨネーズが入ってるから
  食べられないんだろうな」
「そういえば、あの時…」
一日中、何度も思い出す彼のこと

会いたいけど彼に会うことができない
周りの人はたくさん会っているのに
どうして私だけ会うチャンスを
奪われているのだろう

神様が「会うな」と言っているのかな
それとも人生の中で深い意味があって
今だけ会うことできないのかな

私が想うこと自体が彼に迷惑なのかと
思う時もあるけれど 

忘れようとすればするほど
苦しくてたまらなくて
涙がこぼれてしまう

月も彼も手を伸ばせば届きそうだけど
実際はすごく遠くにいて
挫けそうになる

空に向かって、そっとささやく
「密かに想うだけなら許してください」
夜空の星たちがまるで
優しく応援してくれてるみたいに 
キラキラ輝いている

小さな希望だけは捨てないことにした

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