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気付かなかった小さな幸せ

人気のない駅のホーム
4人がけのベンチに腰を下ろす
秋なのに凍えるような冷たい風
丸めて捨てられたティッシュが
コロコロと風に遊ばれている

灰色の空に黒い雲が
少しずつ近づいてくる
私は深くため息をつく
ふと思い出すやり切れない思い
どうにもならない重い現実が
頭いっぱいに埋め尽くされる

俯いたまま薄汚れたスニーカーを
じっと見つめるうちに
涙が溢れてこぼれ落ちた

打ちのめされた私の心に
冷い風が深く染み込んでゆく

いつまで私は暗い現実の中で
凍えたまま立ち尽くしているのだろう
新しい未来へと進みたくても進めない
不安と恐怖が体にまとわりついて
動くたびに心が痛む

たとえ勇気を出して
一歩進んでみても
見えない壁にぶつかって
すぐに元の場所に
引き戻されてしまう
そうやって勇気が薄れて
無力感が重くのしかかる

「進むのなんて簡単だよ」と
幸せという温かい毛布に
ずっと包まれて生きてきた人たちが
薄っぺらいアドバイスをくれる

苦しみなんて何も知らないくせに

ハンカチをカバンから取り出して
涙を拭いて鼻をすする

後ろのベンチで
小さな女の子とお母さんが話してる
穏やかなトーンの声に
なんだか、ほっこりする

私にもあんな幸せな日々があったのだと
しみじみと思い出す

当時は何も考えなかったけど
気付かなかった小さな幸せ

小さな幸せでも構わないから
早く私にも幸せな時間が再び
訪れますように


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