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深い湖の底に身を隠した魚

深い湖の底に身を隠した魚は
キラキラ光る水面に行こうとしても
すぐには辿り着けない  
少しずつ前へ前へ
進まなくてはならない

今、人生のどん底にいる私
突然大切なものを失い
自信も生きる気力も
溶けて何処かへ消えてしまった

自ら湖の底を選んだ魚のように
私の人生もこのままずっと
底にいるしかないと諦めていた

ある日、近くを通った知らない魚から
「君は水面に行けるよ」と
教えてもらった
キラキラした水面の向こうに
幸せがあると
希望をもらった

私は底から抜け出す決心をした

でも、すぐに挫けてしまった
頑張っても、頑張っても
歯を食いしばって泳いでも
何も変わらない
もがいても、もがいても
同じ場所にいる気がする

早く皆んなみたいに
キラキラとした水面で
楽しみながら泳ぎたい

なのにどうして
上手く前へ進めないのだろう

一度動きを止めて
目を閉じてじっくり
自分の奥深くに聞いてみた

奥深くにいた小さな私は
うずくまって泣いていた
いつも心が痛くて 
罪悪感でいっぱいで
体も痛くて重くて
思うように動かない
もうこれ以上無理はしたくないと
何度も涙を拭きながら
小さな声で私に言った

がむしゃらに動いたって
自分を傷つけるだけだと
思い知った

私は体に絡みついた寄生虫を
海藻に擦り付けて取ってみた
傷口はまだ痛むけど
体が楽に動くようになった

お腹の中にあるモヤモヤした 
過去の痛みや苦しみを
空気と一緒にポコポコと
お尻から出してみた
心の痛みが半分くらい消えた

早く行かなきゃと 
焦って進んでいると
「辛い」とか「苦しい」とか
いつの間にか思ってしまう

だから好きな歌を頭の中で
歌いながら進むことにした
歌が飽きたら美味しいものを食べたり
楽しい未来を想像したり
余計なことを考え無いことにした

そんな風に肩の力を抜きながら
前に進んでいたら 
いつの間にか
湖の底から水面までの
半分くらいまで進んでいた

なんとなく苦しい底からは
脱出できていた
水面まであと半分  

時々、強い敵から身を守るために
逆戻りしたり
水の流れに押し戻されたり
思うように前に進めないけど
少しずつ少しずつ
希望の光が差し込む方へ
時には休みながら
自分のペースで
進んで行くことにした

未来の自分が
あの水面のように
キラキラした光り輝く場所に
いることを信じたいから

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