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あの場所に行くことができる日は

静まった夜の車でひとり
駅までの道のりを走らせる私
ラジオから流れる聞き慣れない曲
逃げられない現実と
全てを捨てて、あの場所へ行きたい気持ち
あふれ出そうな気持を無理に抑え込めば
夜の灯りに吸い込まれそうで
気が遠くなる

お互いに興味のなくなった
お互いに思いやりを持てなくなった人を
どうして迎えに行くのだろう

この道を真っ直ぐ行けばあの場所がある
温かくて優しくて
私の心を大きく包み込んでくれて
ありのままの自分でも認めてくれる
あの人がいる、あの場所

今日こそ、あの場所へたどり着こう
そう思いながらアクセルを深く踏む
でも交差点の直前で無意識に
ブレーキを踏んで慣れた道へと
右折してしまう

相変わらず、いくじのない私
大きくため息をつく私の上で
満月が何も言わずに見下ろしている
今日もまた新しい未来より
使い古しの日常を選んでしまった

私があの場所に行くことができる日は
いつなんだろう
そして、そんな日は来るのだろうか

車を止めると近づく見慣れた人影
ドアが開く
「おかえり!」
心と裏腹に作る笑顔と少し声が高めの私
無言で乗り込む見慣れた人影

また絶望の夜が始まる

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