#2 『自分の働く価値』を考える

先輩をなぞることで人生をうまく渡っていくことが難しくなった現在、自分自身で働き方の地図を描きながら、確認したり変化を加えていく必要がある。モチベーションを維持したり、次のステップの指針となってくれる手段として提案されている自分の「働く価値」についてまとめた。


「働く価値」とは

「働く価値」といっても、広く認知されているというわけでもないし、取り上げる人によっても捉え方、考え方が異なるところがある。ここでは共通する部分を繋いでまとめてみた。

何のこと

自分の「働く価値」は、自分自身が働くことで生み出す価値のこと。「自分が働くことは価値がある、だからお金をもらえるんだ」と言うことはみんな考えることだが、「自分が働くことで価値が生まれる」と捉える人は少ないのでは無いか?また「自分が働くことで生み出す価値は◯◯です」といえる人はさらに少なくなるのではないだろうか。

日本の企業では、ビジネス顧客と売り買いできるもののみが価値であり、それを生み出すことのできるのは組織だという考え方をしがちだ。結果、個人は価値を生み出すことに関しては無力だと考えがちだが、別の見方をすれば、個々人が働くことで個人、グループのレベルで価値を生み出しており、その価値の結果として企業や組織のより大きな価値が生み出されていると考えることができる。

価値は、作業前と作業後の差、つまりあなたが働くことで、相手にどのような良いことが起きるかと言うことができる。または、他の人ではなく、あなたに任される理由と言うことも言える。また価値は、お金や数値に換算しやすいものもあれば、しにくい価値もある。そのどちらのほうが重要かは簡単には言い切れない。

就職活動や人事考課では、個人のスキル(できること)に就いては細かくチェックされたり、評価されるが、個人の働いた結果生み出される価値については、大きく取り上げられることはないが、自分の働き方を考えるときはとても大事になる。

まずは、自分個人が働くことで価値を生み出すことができるという認識

国内の企業や組織で働いているとありがちなこととして、個人が働く価値は所属する組織なしでは生み出せないという考えてしまう。つまり、報酬は拘束時間の代償として支払われ、拘束時間の活動により会社のしくみによってのみ価値が生み出されると考えがちである。
これは一つの考え方であるが、日本以外の多くの文化圏において、個人が特定の能力を評価されて雇用され、生み出す価値を時間当たりに換算したものが単価として計算できるという考え方がある。
また、この国では謙虚さが美徳とされ、自分を前に出さない傾向があるのだが、それが身についてしまい、自分を過小評価してしまったり、自分と組織を切り離して説明することができないことがある。自分の人生の責任は、企業では無く自分でとらざるを得ない現実では、機会に応じて自分の働く価値について、納得できる説明を準備しておくことが良策である。

自分の「働く価値」を、大きすぎず小さすぎず評価できる

「働く価値」を考えるときは、実際に自分一人で生み出せるのは何かということを確認する必要がある。過大評価してしまうと、組織や他人の支援によってできていることと自分のできることが混同してしまい、そのグループや支援者がいなくなった状況では実現できないものを自分のものと誤解してしまうことがある。反対に過小評価してしまうと、自分の可能性を自分で閉ざしてしまうことになる。
以下の3つは、「働く価値」をチェックするときのポイントである。
・組織の生み出す価値と、自分の生み出す価値を混同しない
・自分の価値について説明する言葉を見つける
・知識、関心、希望とコンペテンスの区別できる

短い言葉で表現できる

文字表現することによって、自分で見直すこともできるし、他の人とそれが正しいかとか、他の可能性について話をすることもできる。過大評価や過小評価がなく、興味深く発展性のある言葉として表現することが大事だ。

「働く価値」はどのように取り上げられているか

既存のキャリア関連本などで「働く価値」についてどのように扱われているか見てみよう。

ティム・クラークは『ビジネスモデルYou』の中で、個人の働き方のモデルの核として、働くことによって顧客に「与える価値」(原書では「value provided」)を上げている。アメリカを中心に発展したビジネス用語の「バリュー・プロポジション(value proposition)」をベースにしている。
「与える価値」とは、顧客はどんなニーズを満たすために、自分を雇っているのか」そして「その仕事の結果として顧客はどんな価値を得ているのか」と定義づけている。更に、日本語未訳のVer2.0版では「製品やサービスの組み合わせによって生み出される顧客にとっての利益」と説明している。

一方、村山昇は『はたらき方の哲学』の自分の働く目的を考えたり表現するためのツールとして「提供価値」を上げ、「私の提供価値宣言」を作ることを勧めている。「提供価値」は、「私たちは仕事を通じて、目に見える具体的なモノやサービスを売っていますが、もっと根本的に考えると、その核にある『価値』を売っています。また、製品・サービスの核にある提供価値は変わらない。」と説明している。
その例として

  • 保険会社のプランナーは「経済的リスクを回避する安心」という価値を届けている

  • 自動車メーカーの開発者は「快適な移動空間/道具」という価値を届けている

  • 参考として各社の掲げるコーポレート・スローガンを上げている

2つの考え方は似た部分もあるが、異なる部分は両者の文化背景や「働く価値」をどう活用するかという点で異なる部分もある。

利点と活用方法

以下、「働く価値」を考える利点と活用方法をリストアップしてみた。
○自分の働く価値を考えることで、自己肯定感ができる。
○技術や社会の変化が激しいといわれる中で自分の身につけたスキルに対する評価が影響を受けることがあるが、自分の働く価値はもう少し長い視野で考えることができ自分のキャリアについて悩んだり行き詰まってしまったときの支えとなる。
○「働く価値」は、明確化し、適切かどうかを評価し、修正・更新することができる。現状を表現することもできるし、自分の目標にすることもできる。
○「働く価値」のサイズ感を変えたり、相手を変えることで、将来の働き方の計画を立てるヒントになる。
○インタビューなどでは、働く目的や、自分の役割、自分の得意なこと、など高次な質問をされたときに役に立つ。

おまけ


これに似た考え方で、バリュー・プロポジション(value proposition)というものがあるので、それについても、別途まとめてみたい。(予告)
(キーワード)バリュープロポジション、提供価値、提案価値、顧客価値

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