ユニホームを羽織はおり、
野球帽を被かぶった男性。
 
急いでテレビを点け、
チャンネルを野球中継に切り替える。
 
「やっぱり、もう始まってた～。
 
　ブルージェイズは菊地選手か～。
　今季は調子いいんだよな。

　今日、大丈夫かな～。 
 
　試合は…
　５回裏　エンゼルスの攻撃で、
　６対０でエンゼルスリード！！
 
　大谷くんホームラン打ってる！
　さすが！！
 
　これはいい流れじゃないか？
 
　今日の試合は、
　もうもらったも同然だろ！」
 
１時間後。
 
「試合終了。
　延長１１回。
　１２対１１でブルージェイズが、
　逆転勝利を収おさめました」
 
「何で？！
 
　６点差ってそんな簡単に、
　ひっくり返る？
 
　まさかの次の回で同点。

　さらに次の回で４点追加され…
　６対１０。
 
　これはダメかぁ…
 
　と思ってたら９回裏で、
　追いついて喜んだら…
　延長で２点も取られて落胆。
 
　そしたら１点取り返して…
　これは！と思ったら、
　そのまま試合終了。
 
　どれだけ俺の心を、
　弄もてあそべば気が済むんだ！
 
　でも…やっぱりさ…
　大ファンだから…
　最後まで観ちゃうんだよね。
 
　例え１０点差がついていたとしても、
　俺は最後まで諦あきらめず、
　選手たちと一緒に戦いたい。
 
　まあ結果、
　今日みたいな気持ちになる時も、
　多いんだけどさ…。
 
　待てよ…。
 
　最近、俺が見るゲームって、
　必ず負けてないか？
 
　昨日…負けてる…
　一昨日…負けてる…
　あれ？５日前…負けてる！
 
　俺が観てるゲーム全敗？
 
　え？！俺が悪い？
　俺が観てるから？
 
　いやいや。
 
　全世界の人が観てるんだから、
　そんなことはありえないだろ…。
 
　でも…
　もしかして…そうだとしたら…。
 
　試しに明後日の試合…
　我慢してみよう…
 
　耐えろ、俺！
　チームの勝利のために！！」
 
二日後。
 
「勝った、圧勝！！
 
　これは！…いや…
 
　勝率なんて半々だから、
　たまたまってこともある。
 
　よし！
　今週は絶対、野球中継観ない！
 
　決めた！
　これで真相がわかるはず！！」
 
１週間後。
 
「４勝１敗…。
 
　微妙な結果だなあ…。
 
　観ない方がいい結果だけど、
　観なくても負けるっていう事実が…。
 
　でもこれには何かある…
 
　この現象に、
　俺は何か関係してる！
 
　そんな気がする！！」
 
それから２ヶ月後。
 
「あれ？
　お父さんどうしたの？
　いつのまにアストロズファン？
 
　ん？
　お父さん…泣いてる？
 
　どうしたの？！」
 
「俺の…心は…エンジュェ…ルス…
　魂までは…売らないぞ！
 
　え…永遠に…
　グスッ…グスッ…
 
　ダァ～～～～～ァァ」
 
「ちょっとお母さん！
　お父さん、ブツブツ言いながら、
　泣いてるよ！
 
　何があったの？
　急にアストロズの帽子被っちゃって」
 
「なんかね…
　そのチームの帽子を被って、
　試合観戦すると、
　そのチームが必ず負けるんだって。
 
　だから好きでもないチームの帽子を、
　被ってるみたいよ」
 
「ええ～？！
　いくらそうだとしても、
　大嫌いなライバルチームの帽子で、
　応援する？」
 
「だから泣いてるのよ。
 
　敵チームの帽子を、
　被ってしまった自己嫌悪と、
　チームへの貢献心で、
　頭の中がグチャグチャなんじゃない…
　きっと」
 
「こ…これで…
　今年こそ…ワールドチャンピオン…
　ダァ～～～～～ァァ！」