特に目的もなく、
テレビを見ていた。
 
すると、
着物姿の少し大柄な女性が現れる。
 
その後を追うように、
人相にんそうの悪い袴姿はかますがたの人物。
 
顔を袖そでで隠かくしながら逃にげ惑まどう女性を、
ニヤニヤと薄気味悪うすきみわるい笑顔で、
追い詰めていく男。
 
（これは…女中じょちゅうさんと悪代官あくだいかん？）
 
昔見た時代劇のワンシーンが、
目の前に繰り広げられていた。
 
座敷ざしきの隅に屏風びょうぶを盾にし、
必死の抵抗を試こころみる女中。
 
その姿を見て悪代官は、
ひとつ鼻息を鳴らし、
どかっとお膳ぜんの前に座り込む。
 
そして盃さかずきを手にし、
女中の方へ差し出す。
 
「ならば娘！
　ここに来て、酌しゃくをしろ！
　ほれ、早はよう」
「嫌です…」
 
「いいから、近ちこうよれ！
　さっさと酌をせい！
　酌をすれば許してやるから」
「そ、それでしたら…」
 
盃に震ふるえる手でお酒を注つぐ女中。
 
「あっ！お主！
　酒が袴はかまに溢こぼれたではないか！」
「申し訳ございません、お代官様。
　どうかお許しを～」
 
「ええ～い、許さん！
　お前の着物で拭ぬぐうゆえ、
　いますぐその着物を脱げ！」
「それだけはご勘弁かんべんを～」
 
「うるさい！
　ならばこうしてくれる！」
「あ～れ～～」
 
「ほれ～ほれ～！
　ハッハッハ。剥はいでやったわ！」
「もうお代官様お許しを～。
　その着物、返して下さいまし」
 
「いや！その肌襦袢はだじゅばんの方が、
　よく拭き取れそうじゃ。
　それもよこせ～！」
「あ～れ～まわる～」
 
「よいではないか～
　よいではないか～」
 
肌はあらわになり、
座敷に座り込むと、
肌を隠そうと身を縮ちじめる女中。
 
それを上から見下ろし、
満面の笑みを浮かべる悪代官。
 
「おお～！
　この肌襦袢肌着はよく酒を吸いそうじゃ！
　ほほ～。
　それにこれはなかなかいい眺ながめじゃ～。
　これを肴さかなに飲み直そうかのう」
 
すると女中は顔を上げ、
勢いきおいよく立ち上がり…
 
そして何も隠かくすことなく、
悪代官の前に仁王立におうだちになった！
 
（え？！
　それヤバいって！！）
 
「安心して下さい！Don't Warry！
　はいてますよ！I'm Wearing！」
 
「手の込んだ新ネタだな！
　おい！」