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覚悟の作り方。

先日のこと。
4年目を迎えるスタッフが朝、急に過呼吸を起こした。
そのまま外来へ運ばれ、呼吸は落ち着いたものの、相当怖かったのか泣きじゃくっており、とても働ける状態ではなかったので、そのまま休ませることにした。

後で他のスタッフから事情を聞いたところ、一向に患者さんに対する「覚悟」ができてこないため、教育係となっているスタッフの方から色々とプレッシャーがあったとのことだった。

教育係としてもつらい立場だった。
本来であれば4年目は新人教育期間を終え、独り立ちしていくはずなのだが、本人の自覚の足りなさなのか、単に何も考えていないのか、これまでも教育係は熱心に「自覚」を促すように再三指導を繰り返しているのだが一向に響かず、まったく行動が出てこない子であった。

その「自覚」とは何なのか、それは自分の担当の患者を受け持つという責任と、その患者さんの人生の一端をともに背負うという覚悟のことだと私は思う。

私が実習生の頃は、実習段階からこの「自覚」について学んできた。
来年には資格を得て、患者さんをみる。
それがどういうことがわかるのか、
新人だろうが10年目だろうが、患者さんにとっては担当は1人なんだ。
新人だからという甘えは通用しない。
同じお金を払って治療を受けるのだ。
その「覚悟」が君にあるのか。

かなり厳しい言葉のようだけど、これは正しい。
かつての私は実習は「教えてもらう」「勉強しにいく」というスタンスでいた。
バイザーの先生の先の言葉をもらって、実習生だろうが、貴重な患者さんのリハビリ時間をいただいて勉強させてもらっている。
その時間もきちんと「治療」にしなくてはならない。
私が「担当」になるのだ。

私の「覚悟」が決まった瞬間であった。

今でも時折、この瞬間を思い出す。
実習生として担当していた患者さんと話をさせて欲しいとバイザーに願い出て、患者さん二人きりで話した。

「私は実習生としてこの病院でお世話になり、縁あって〇〇さんを担当させていただくことになりました。私も担当の先生(バイザー)のように〇〇さんの力になれるように、一生懸麺勉強して、この時間が私のものではなく、〇〇さんのための時間になるように頑張ります。だから実習生と思って甘やかさないでください、お願いします」

この後、私と〇〇さんの関係性は大きく変わった。
これまで実習生として体を貸してあげるというスタンスであったが、完全に自分の担当として見てくれるようになった。

だからこそ痛いときは我慢をせず痛い、力が弱い、強いなどを遠慮せず言ってくれたし、自分の深いところでの悩みや不安も吐露してくれた。

このような経験が自分をセラピストとして大きく成長させてくれたのは言うまでもない。

しかし、今は実習ではこのような責任を負わせることはなくなった。
全国的にこうした「責任」のプレッシャーから押しつぶされる学生が後を立たず、実習=つらいものというレッテルが貼られ、〇〇ハラスメントの流行りと同時にこうした実習形態も変化せざる得ない状況なり、現在ではこうした責任の重さは入職後の「新人教育」の場で教えなくてはならなくなった。

当然、そうなればその責任が重くのしかかってくるのが教育係となるスタッフである。
自分の担当している患者に加えて新人が担当している患者の責任も負わなくてはいけないのである。

責任感が強いスタッフほどその重圧は凄まじい。
それがわかっているからこそ、新人教育への熱も入るし、新人教育後、そのプレッシャーに耐えられるだけのメンタルも育てなくてはならないので当たりも厳しいものになる。

当然、その子が独り立ちして負う責任の重さに比べれば屁みたいなものであるが部活や学校生活から「厳しさ」が薄れていく中で育ってきたものほど、その屁のような「厳しさ」でも耐えられなくなっていき、今回のように「爆発」してしまうのだと思う。

ほんと誰にも罪はない。

どんなに「ゆるく」しようが、仕事の責任の量や重さが「ゆるく」なるわけではない。

安西先生のいう「断固たる決意=覚悟」が唯一その責任の重さやプレッシャーに対抗できるものだと私は思う。

スラムダンク 25巻より

その「覚悟」作り方は難しいものではない、単に「決める」だけだ。

私は「やる」と「決めた」

決まったら進むべき道が光る。

これからの新人教育はまずはスラムダンクを読むところからはじめよう。

追伸
バスケットボール日本代表選手の皆様、パリ五輪への出場権獲得おめでとうございます。4Qの大きなプレッシャーの中で皆さんが示した「断固たる決意」に大きく感動し、勇気をもらいました

#エッセイ #日記 #仕事論 #断固たる決意 #覚悟 #バスケットボール #スラムダンク


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